我が国新興株市場の低迷と、振興企業のIRの問題 1

 新興株市場が低迷を続けている。日経ジャスダック平均株価、東証マザーズ指数、大証ヘラクレス指数の三新興株市場は連日低迷し、昨日にはそろって年初来安値をあっさりと更新してしまった。株価下落リスクを嫌う大手機関投資家が、投資資金を安全性の高い大型株へシフトさせており、また、外人による新興株の売りが止まらない状況だという。高値をそぞろに謳歌する大型株との格差が、この段におよんでいよいよ明確になってきている。

この状況で痛手を蒙っているのは、ライブドア事件でひとつのピークを経験した個人投資家であろう。楽天USENといった新興代表銘柄から、最近上場したミクシィまで、株価は往時の五分の一から六分の一にまで暴落している。新興株市場に一体何が起こっているのであろうか。また、この先新興株市場が何らかの復活を遂げることはありえるのであろうか。

新興株市場が低迷している理由のひとつは、オーバーバリューに評価されていた新興株が軒並み修正されて本来の株価に近づいたとするものである。ファンダメンタルズ的にもともと価値がない新興株を、デイトレーダーがこぞって買い求めた結果、株価が異常に吊り上げられたとするものである。確かに、最近までの新興株は、堀江のライブドア株に代表されるように、大なり小なり砂上の楼閣的色合いを持っていた。「何をやっているかわからない会社」の株価収益率が100倍を越す事態とは、それをもってひとつの異常事態であると断ぜねばならないであろう。新興株の下落は、自然の摂理の結果として、落ちるべきものが落ちたということである。

また、新興株市場におけるプレーヤーの脆弱性も理由のひとつに挙げられるであろう。新興株市場のプレーヤーの80%は個人投資家であるとされるが、その個人投資家は、デイトレーダーなども含め、機関投資家やその他のプロの投資家に比べ、知識、経験、運用規模、いずれにおいても劣っている。その場合、可能性として、確固の投資戦略なり投資判断をもって投資を行っているとする向きは弱く、どちらかというと、他人の動きや、他から入ってくる情報を頼りにして投資を行う傾向が強くなるであろう。その場合、例えば株価下落のフェーズにおいては、売りなら売りを促す情報が飛び込んでくるや直ちに売り逃げようとするメンタル上の強迫観念が強まるであろう。最近の下落に見られるように、売りに転ずるとなかなか買い支え手が現れないのは、多分にそれを物語っている。株価が少々減じたところで、例えば中長期の期間をもって、さらに、例えば事業的に成長が強く見込まれるであるとか、この程度の株価収益率であれば許容範囲であるとかといった投資ポリシーがあれば、そもそも高値でつかむこともないし、仮につかんだとしても、心理的にほとんど動じることなく株価の動きを眺めていられるであろう。
(続く)