ライブドア錬金術のメカニズムを解明する:脱税編

 ネットを使った商取引の増加は、結果的にネット長者を輩出することになったが、同時に、納付するべき税金を納めない非納税者の増加を促すことにもつながった。事業家と納税制度は常にイタチごっこをするが、現代のネット社会においても古くて新しい問題が露呈することになったわけだ。

納めるべき税金を納めないことを未納と呼ぶが、未納の状態に至るに際し、故意的に行うことを脱税と呼び、故意的でなく行うことを申告漏れと呼ぶ。税金を納めないという行為は同じにせよ、最初から意図して行うのか、あるいは、「税金を納めなければいけないという義務すら知らなかった」状態で行うのか、プロセスにおいて大なる違いがあるとするのである。これは、当局の関係者がもっとも注目するところであるが、人を殺すという行為に例えた場合の殺人と過失致死のようなものと思えばよい。なお、脱税は「偽りその他不正な行為により納税を免れる」犯罪である。以前、脱税は行政犯罪と見られていたが、今日では通常の刑事犯と同様に取扱われている。日本では租税犯については、刑事訴訟法の手続きにより取扱われるが、その前提として国税犯則取締法による犯則事件の調査が行われることが多い。

なお、日本の直接税並びに関税及び消費税の脱税については、所得税法法人税法などの各税法に基づき、一般的に5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処せられる。また、申告漏れについては、一般に重加算税を支払うことにより処罰される(なお、脱税で有罪判決を受けると「前科」がつく)。

話はさらにそれる(多分、この辺のくだりは少なからぬ数の読者がご興味をお持ちであると察するが)。例えば、消費税の脱税などは、小売店であればまずほとんど行っているとされる(つまり、現金による売上げをきちんと記録している商人はいないということ)。しかし、消費税の脱税犯を捕獲することは不可能ではないにせよ、それを行うだけのコストメリットが当局サイドにないのも一方では事実である。マルサの凄腕を日本全国の全商店街に配置するなどは、最初から出来ない話である。しかし、サラリーマンの年末調整はほとんど国策レベル的に整備されているので、こちらは摘発を行うだけのコストメリットが発生する。年末調整をきちんと行わない企業については、管轄の税務署が電話を一本いれれば問題はすぐに解決する。つまり、当局が動くか動かないかの判断基準は、それを行うだけの効率性が得られるかどうかにかかっている。摘発してもそれほどの見返りがない事件については、当局はそれほど力を入れないが、見返りが確実なケースにおいては、それこそ全力をあげて臨んでくる。なお、これはマクロレベルおよびミクロレベルのそれぞれについて言える話でもある。一件の数的要件は満たされないにせよ、それを摘発することによって波及効果が得られるといったケースにおいては、当局はそれこそ死に物狂いになって摘発をしかけてくる。最近のネット長者に対する摘発がそれであり、また、本論に戻るが、堀江に対する脱税嫌疑もまた、それなのである。
(次回へ続く)