ライブドア錬金術のメカニズムを解明する:脱税編

 脱税のくだりに関し、会社の税務を担当する税理士について少々コメントしておこう。堀江の相棒の宮内は税理士であるが、税理士はいくつかのタイプに分けられる。あえて三つに分類すると、1)税理士試験に合格した税理士 2)税務署・国税局OBの税理士 3)その他の税理士 になる。1)の税理士が一般的な税理士で、指定試験課目五科目以上を合格すると税理士免許が国家から授与される。なお、逮捕された宮内はこれに該当する。税理士試験は、ほとんど単純記憶能力と単純適用能力を試す試験とされ、試験科目をこつこつと反復的に勉強することが求められるとされる。なお、高卒の税理士が少なくないのは、比較的頭の柔らかい若年期からそのような反復作業をすることにより試験科目を一つずつ着実に突破する輩が多いからだとされる(税理士に商業高校出身者が多いのはそのせい)。なお、宮内はこれにも該当する。このタイプの税理士は、自ら時間と費用をかけて税理士試験を突破したクチであるので、比較的まじめな性格の税理士が多いとされる。

 次に、2)の税務署・国税局OBの税理士であるが、これは、当局に一定期間以上勤務した一般職以上の職員が、自動的に税理士免許が授与されて税理士になったタイプである。これは、税理士が不足していた戦後の臨時行政の名残であるとされるが、一般の諸官庁における官吏に対する行政書士免許の付与制度と同様と思えばよい。実は、このタイプの税理士は数も多く、いわゆる「税務署OB」「国税OB」というのはこのタイプの税理士のことである。「税務署OB」であるからといって、別に税務署に勤務しながら勉強し、税理士試験を突破したわけでも何でもなく、「一定期間以上」税務署に勤務していただけの理由で税理士になったというものである。実は、このタイプの税理士が一番厄介で、有象無象の輩を輩出しているのが実情である。

 このタイプの税理士が厄介なのは、これらの税理士が良くも悪くも税務署のOBであり、税務署を退官した後も引き続き税務署と何らかのつながりがある点なのである。前回、脱税・税金申告漏れには常に「見解の相違がついてまわる」と述べたが、見解の相違を調整するに際し、このタイプの税理士は極めて有効に機能する。もともと自分が勤めていた役所であるから、そもそもどのような判断基準なり方向性で脱税を摘発するかのさじ加減がわかっているし、また、どこまでの行動範囲が「見解の相違」を満たさないかもわかっている。つまり、税務署、納税者双方にとっての「調整役」としてはまさに最適の人材と言えるわけで、会社によってはこのタイプの税理士を対税務局対策用にわざわざ二重雇用しているケースもあるのである。

 しかし、これはまさに両刃の剣であるが、以上のようなかたちで薬になると思われる税務署OB税理士であるが、一方、納税者にとっては結構危険なリスクをはらんでもいる。それは、税務署OB税理士は、退官したあとも依然として「税務署OB」税理士であり、彼または彼女は、時と場合によっては、雇用者である納税者の利益よりも、古巣の税務署の利益を優先する行動を取ることがあるという点である。
(次回へ続く)