ライブドア錬金術のメカニズムを解明する:M&A編

ライブドアが買収した企業、特に、「友好的買収」によってライブドアの手中に収めた企業の中では、弥生は比較的良好な部類に属するが、中には、とても良好とは思われない企業もライブドアM&Aリストに含まれている。今回のライブドア事件発覚の口火を切ったバリュークリック社(現名ライブドアマーケティング)や、関連企業マネーライフ社といった企業は、言うなれば買収のための買収のターゲットにされた感を否めない。また、ウェブマネーなる会社の実体も甚だ怪しく、同様の感をどうしても否めない。ここで推察される堀江のスキームは、

 株式分割で利益を得る→得られた利益で「有望な企業」を買収する→その結果、株価が上場する→さらに得られた利益でさらに「有望な企業」を買収する→その結果、さらに株価が上昇する

という「善循環」にある。そして、「有望な企業」を演出するために、「とても良好とは思えない会社」に「粉飾」を施して見栄えを良くし、「粉飾された会社」を含めてグループ全体の株価を吊り上げていたのが実体であろう。

 繰り返しになるが、通常のM&Aにおいては、友好的M&Aはあくまでも友好的に行われる。M&Aは、よく結婚に例えられるが、良好な結婚というものは、まずは相互の情報開示を徹底し、お互いの価値観や共通目的において完全な合意がなされ、さらに、両者の家族を含めた関係者全員の祝福があった上でなされるのを理想とするであろう。企業においても、財務情報を含めた相互の情報開示を徹底し、お互いの価値観(企業文化や哲学も含まれる)や共通目的(社会性や利益目標など)において完全な合意がなされ、さらに、両社の従業員、株主、取引先といった関係者全員の祝福があった上でなされるのを理想とする。この前提において堀江の行った一連の「友好的M&A」を考察すると、甚だ曖昧で不明瞭の感を認めざるを得ない。あたかも、堀江という一人のドンファン的人物が、ある日突然、どこからか得たいの知れない「婚約者」を連れてきて、家族一同に対し、「僕はこの人が好きだから結婚します」と宣言するのと同様である。さらに、その「婚約者」の女性たるや、身元は不透明で家族構成も判然とせず、風貌も厚化粧で派手な装いをしている、一目で風俗関係者と推察されうる女性、といった具合である。まあ、どう考えてもまともな話ではないというところであろう。

 今回のライブドア事件でもっとも問題であると思われるのは、上のような話、投資家が冷静になった現時点においてようやく納得されうるような話、が、熱狂渦巻く市場の中では必ずしも冷静に議論されることがなかった点にある。これは、例えば男が女の玉の輿に乗るような話においては、まずは早急の入籍が急がれるといった類の話なのかもしれない(なお、一般の「友好的M&A」においても、経営者同士による本当の婚姻関係を使ってM&Aをするケースも存在するのだ)。最後にもう一度忠告しておきたい。熱狂渦巻く中での「友好的M&A」を投資対象とする場合は、あくまでも冷静に客観情報を分析し、その上で投資判断をしなければならない。我々は、「熱狂」に欺かれてはならないのだ。
(次回へ続く)