ライブドア錬金術のメカニズムを解明する:M&A編

 突然実施されたドン・キホーテによるTOBに対し、オリジン東秀は、取締役会と労働組合のいずれもが買収拒否を宣言している。そして、ドン・キホーテTOBを開始した二週間後には、今度はイオンがオリジン東秀に対してTOBを行うと発表した。なお、ドン・キホーテによるTOBでは買付価格は一株2,800円だが、イオンによるTOBでは一株3,100円となっている。公開買付は一般投資家に対して行われるので、イオンによるTOBが有利なのは一目瞭然である。なお、イオンによるTOBでは、オリジン東秀の発行済み株式の過半数以上の取得が目標とされている(つまり、ドン・キホーテと同様、経営権の取得が目標)。

 このようなかたちで現れる救世主を一般に「ホワイト・ナイト」と呼ぶことは読者も既にご存知であろう。先のライブドアによるフジテレビ買収騒動の際、北尾氏率いるソフトバンクインベストメントが「ホワイト・ナイト」として登場したのは記憶に新しい。なお、今回のオリジン東秀におけるTOB騒動では、同社の取締役会と労働組合のいずれもがイオンによる買収を受け入れる声明を発表している。ドン・キホーテによる買収では「企業文化が大きく異なる」が、イオンによる買収では、「出店協力や事業提携などにおいて、シナジー効果が著しく高い」というのが本音であろう。一方、ドン・キホーテでは「内容を精査し対応を検討したい」とのコメントを発表しており、買付価格引き上げの可能性を示唆している。また、イオンは、今後ドン・キホーテが買付価格を引き上げた場合、「柔軟に対応したい」として、対抗引き上げを示唆している。

 オリジン東秀におけるTOB騒動は、最終的にはイオンによる友好的M&Aというかたちで決着するであろう。企業文化、事業内容、財務体質のいずれにおいても、イオンの方がオリジン東秀のパートナーとしてドン・キホーテよりふさわしいからである。これも通常の結婚と同様だが、お互いの家柄があまりにも隔絶した結婚は、最終的には失敗に終わるケースが多い。当初はそれなりにうまくやってゆこうと努力するが、一緒に過ごす時間が長くなるにつれ、それぞれの出自の生活環境や文化の相違が浮上し、最終的に対立する運びとなるものである(一方、出自が極端に違いすぎる場合は割合上手くゆくケースが多いのも事実である。大企業による技術系ベンチャー企業の買収などはその好例である)。今回のケースは、少々アウトロー的な雰囲気を持つ成り上がり企業が、地道に基盤を固めてきた中食事業者を、自社の「戦略」に組み込もうとして強引に結婚を申し込み、拒絶されそうになったので秘密裏に求婚相手の親戚一同の白紙委任状を「それなりの値段」で買い取ろうとしたようなものである。一方、「突然の求婚者」の出現に驚いた中食事業者は、我が身を守るために「近しい知人」に相談したところ、相談相手から「それなりの家柄と血筋」を持った結婚相手を紹介され、円満成就を目指す運びとなった、といったところであろう。

 今回のケースは、幸いにしてイオンという「ホワイト・ナイト」によってオリジン東秀が守られるというかたちで終わりそうだ。しかし、「ホワイト・ナイト」が現れない場合、企業はどのようにして敵対的買収者から身を守るのであろうか。話はさらに脇道にそれるが、次回はその辺について説明してみよう。
(次回へ続く)