ライブドア錬金術のメカニズムを解明する:投資事業組合編

 ここまで読んでいただいて、賢明なる読者はライブドア投資事業組合の秘匿性を最大限に悪用して資金流通経路を不明瞭にし、粉飾を可能とするための操作性を確保していたことをご理解いただけたと思う。一般的な事業会社による他企業への投資では、上場企業の場合は特に、出資の関係が自ずと投資家への公開対象になる。これは、法人税制度そのものと直結する議論であり、「従来型」の経営者であれば、投資事業組合を活用して利益分散を行うという発想はなされない。しかし、堀江を筆頭とする振興詐欺師集団は、そもそも事業家でも何でもないので(あえて言えば、「投資家」と言えなくもないが)、発想の原的基盤が投資事業組合そのものにあった。投資事業組合とは、事業をインキュベートするのが事業目的ではなく、あくまでも「有望な投資先」を発掘、投資してリターンを獲得するのが事業目的である。その意味で、堀江が「金儲け」の受け皿として投資事業組合を活用したことは、今考えると極めて合理的に思われる。

 さて、投資事業組合の秘匿性を悪用するライブドアの手口だが、以下に概要を記載する:

?@EFC投資事業組合(業務執行組合員はライブドアファイナンス)がM&Aチャレンジャー1号投資事業組合に出資(業務執行組合員は自殺した野口氏が副社長をしていたエイチ・エス証券関連会社のエイチ・エス・インベストメント)
注意:この時点でHS証券「関連会社」の組成した投資事業組合に出資していることでライブドア本体の出資における秘匿性を確保していることに留意。

?AM&Aチャレンジャー1号投資事業組合が、別の投資事業組合であるVLMA2号投資事業組合(業務執行組合員はバリュー・リンク)に出資。

?BVLMA2号投資事業組合はもともと、マネーライフ社の全株式を所有。

上から時系列を追ってゆくと自然な成り行きに見えるが、逆を追ってゆくと堀江の手口が手に取るようにわかってくる。つまり、

?BVLMA2号投資事業組合はもともと、マネーライフ社の全株式を所有。

という事実に注目し、別の関連会社ライブドアマーケティング(旧バリュー・クリック)にマネーライフの株式交換によるM&Aを行わせ、さらに、ライブドアマーケティング株式分割をもって巨額の利益を獲得していたのである。これらの一連の動きは、「通常」の株式市場またはM&A市場においては、あながちレアケースでもないため注目されることもない話であるが、ライブドア社が大本の出資口である上のケースにおいては、世間の、特に「地検」の注目を集めることになってしまった。株式会社のシステムにおいては、直系であれば連結対象とされる企業も、投資事業組合を活用することにより連結の連鎖を断ち切れるため、堀江または宮内のような悪知恵を働かさんとする輩がどうしても出てきてしまうのだ。
(次回へ続く)