ライブドア錬金術のメカニズムを解明する:投資事業組合編

 以上に、株式分割によるタイムラグの発生を加えると話は極めて複雑になってくる。投資事業組合も上場企業の連結決算対象になるため、ライブドアによる実質支配が濃厚なケースにおいては監査役等のチェックが求められもしたであろうが、一方で、株式分割株式交換をセットにした秘匿的工作が堀江らによって意図的に行われていたとすれば、現場の当事者といえども実体の完全な把握は不可能であったに違いない。

 なお、言い忘れの感があるが、今回のライブドア事件におけるもうひとつのキーワードとして株式交換が挙げられる。あえて解説する必要を認めないが、ライブドア株式交換M&A決済手段として活用してきたことは今一度注視する必要があろう。ライブドアによる株価吊り上げは、前提として株式時価総額の浮動性に連動している。ライブドアによる株式交換においては、主体者であるライブドアの株価の「浮動性」をポジティブに活用し、その上で被買収企業を吸収してきた。ここまで構造が複雑になると、全貌の解明には相当のエネルギーが要求されることにあろう。誠にお気の毒というしかないが、地検特捜部の皆様には、ぜひこの犯罪パズルを隈なく解いていただくよう、祈念する次第である。

ここにきて、筆者のところにエイチ・エス証券野口副社長自殺事件についての極秘情報が飛び込んできた。野口氏の死については関係者一同痛恨の極みであるとするしかないが、確報というべき情報が筆者に届いたのである。実は、野口氏自殺事件には、特定の利益団体の関与が極めて濃厚である可能性が高いというのである。身の危険があるため詳しくは記述できないが、同氏の自殺事件には、某所で展開される予定であった某開発案件を巡るマネーの交錯があったらしいのである。なお、同氏の「怪死」を巡っては今後も様々な憶測を交えた捜査上の紆余曲折があると思われるが、最終的には真実が日の目を見ることになることを願っている。

 ライブドアグループによる一連の事件は、堀江の再逮捕によって全容解明へ向けた地検の仕切り直しステージへと移行した。今後は、堀江による脱税、特別背任での告発へと展開するであろうが、当局にはあくまでも毅然と立件を進めていただきたいと思う。

 投資事業組合は、原型を私的任意団体に帰するため、そもそも株式市場といった公のフィールドに親和しないものである。これを悪用すると即ち犯罪の温床になってしまうのであるが、今回のライブドア事件は、いみじくもそれを見事に証拠立てるものとなってしまった。堀江による投資事業組合の悪用は、関係者であれば一般的であった一線を越えることで成立したとも考えられる。堀江は、ライブドアの旧名オン・ザ・エッヂという社名を極めて好んでいたと聞くが、正にエッヂの一線を越えることにより自らの犯罪者的ステータスを確立してしまったのである。少々昔の相場師あたりであれば、オン・ザ・エッヂという社名を見ただけで「怪しい会社だ」と直感したと思われるが、現代の我々は、経済悪に少々免疫が足りなくなってしまったのではと危惧してしまう。
(次回に続く)