ドン・キホーテによるオリジン東秀TOBその後

 先日、ドン・キホーテによるオリジン東秀TOBと、それに対する「ホワイト・ナイト」としてのイオンの対抗TOBを話題にした。当初は、オリジン東秀に対するTOB騒動は、最終的にはイオンによる友好的M&Aというかたちで決着するであろうと予想した。企業文化、事業内容、財務体質のいずれにおいても、イオンの方がオリジン東秀のパートナーとしてドン・キホーテよりふさわしいと思われたからであった。また、オリジン東秀の取締役会および労働組合のいずれも、ドン・キホーテによる買収に反対を表明しており、どの道TOBが成立することはないと考えていた。

 しかし、先日、これも寝耳に水のニュースが飛び込んできた。ドン・キホーテTOB期限の2月9日の翌日、正式に「オリジン東秀に対するTOBの不成立」を発表したが、その裏で市場内取引を続け、密かにオリジン東秀の株を買い集めていたというのだ。そして、TOB不成立発表の舌の根も乾かぬ2月15日には、同社株式の46.21%を取得したと突然「発表」したのだ。

 ドン・キホーテオリジン東秀TOB失敗後に市場内でオリジン株を買い増したことについて、オリジン東秀は「現行の証券取引法に違反するか、ないしは証取法改正作業中の法の不備を突いている」と強く非難している。また、近く金融庁証券取引等監視委員会に調査を求めることも明らかにした。一方、ドン・キホーテは16日の記者会見で「証取法に違反しないし、法改正の趣旨からも不適切な点はない」と強調し、両者は全面的に対立している。 読者は既にご存知であろうが、現行の証取法では、株式をすべて市場で買えば発行済み株式三分の一超の保有を目指してもTOBの必要はない。しかし、市場内外の取引を組み合わせる複雑なケースが増えていることなどから、被買収企業の支配権を得るために「一連の取引」として市場の内外で株を買う場合、必ずTOBを行うべきだとの所謂三分の一ルールがある。また、イオンもTOBを続行中なので、ドン・キホーテが支配権を目指すなら同じTOBで株を集めないと不公平だとの議論もある。オリジン東秀は、ドン・キホーテの株取得は「一連の取引」に当たり、規制対象になると批判している。 しかし、ドン・キホーテTOB前の取得株と、TOB失敗後に取得した15.28%分は関連がなく、それゆえ「一連の取引」と判断される余地はなく、規制に違反しないと反論している。

 今回の事件も、昨年のライブドアによるニッポン放送株式の立合外取引による買収と同様のイメージを改めて内外に与えることになった。即ち、市場のプレーヤーに対する過度の「性善説」と、それを前提にした「紳士協定的ルール」に依存した村社会的規範である。前回の時の堀江と同様、今回のドン・キホーテについても、自社の行動はあくまでも合法的であり、行為自体はまったく問題がないとしている。
 今後、議論は証券取引等監視委員会による調査へと展開するであろうが、双方いずれの主張が認められるにせよ、ドン・キホーテによるオリジン東秀の買収はいずれにせよ、失敗に終わると予測する。
(次回に続く)