姉歯マンション事件とライブドア事件の類似性(1/2)

 先週までのコラムで、ライブドア事件について多くの紙面を割いてきた。ライブドア事件は今後、証券取引法違反マネーロンダリング、堀江等経営陣による脱税の完全解明へと進むであろう。また、先日はライブドア事件の被害者達がライブドア被害者の会を組織し、堀江に対する損害賠償請求の集団訴訟を起こすことが発表された。さらに、フジテレビによる同社への支援打ち切りと、同時に同社に対する損害賠償請求訴訟を起こすことも発表された。一時は時代の寵児として大いにもてはやされた堀江であるが、こうもあちらこちらで攻撃される今となっては、ほとんど袋叩きの感を覚える。現代という時代と、現代を生きる我々という人間たちが、堀江の犯罪者性に最後まで気づかなかったのは痛恨の極みであるが、この事件をひとつの大きな教訓として学ぶことが、投資家としての我々に課せられた課題であろう。

 堀江の詐欺話に騙された人間は、デイトレーダーに代表される24万人の投資家に集約される。上に挙げたライブドア被害者の会会合に出席した投資家がテレビのインタビューに答えているのを見たが、いずれも一方的に堀江の犯罪性を非難するばかりであった。そこには、自らが行った堀江への投資を反省する姿勢もなく、また、受けた被害から何かを学び取ろうという意欲も感じ取ることができなかった。悪いのは騙された投資家でもあると言ってしまえばいささか強引であろうが、正直に言わせていただくと、今回のライブドア事件の被害者についても、彼らがそれなりの責任を負うべきであると考えている。

 投資の原則は自己責任に帰せられる。一方、私は、わが国では「投資」の概念がきちんと一般化していないとも考えている。今回のような事件が発生すると、被害者がこぞって何らかの公的救済を求めようとするのはそのひとつの根拠であると信じる。ライブドア事件は、最終的には堀江個人の経済的破綻に終決し、結果的に投資家達への損失按分負担に終わるであろう。その結果、損失を蒙った投資家達は、その怒りの矛先を次は国家に向けてくると予想する。「国が堀江のような詐欺師を放置していたのは、証券取引法の制度上の不備に原因している」とか、「そもそもライブドアのような怪しい会社を上場させたことについては、東京証券取引所の責任である」といった類の話である。しかし、先の耐震強度偽装事件の時と同様、消費者が自己の責任において購買したものの瑕疵担保については、あくまでも自己責任で行うべきであると考える。姉歯建築士等が意図的に耐震強度を偽装し、それに基づいてマンションが建設され、それを消費者が自らの判断で買ったのであれば、その瑕疵担保は自らが行うべきである。市場原理のもとでは、例外はあるにせよ、そもそも「タダのもの」は存在しないわけで、違法マンションにはそれなりに「怪しい点」があると読まれてしかるべきである。「こんなに広くて快適なマンションが、そもそもこんなに安い値段で買えるわけがない」と、購買の意思決定をする前に疑ってかかるべきであったのだ。話を聞くと、実際に姉歯マンションの仕様をみて、余りにも安すぎるとして疑念をいだき、商談を辞退したケースもあったと聞く。姉歯事件とライブドア事件を同列に論じるには少々難があるが、ことの本質においては同質であると思われる。
(次回へ続く)