グラハムの投資理論を学ぶ:グラハムについて

 グラハムは投機(Speculation)と投資(Investment)の違いを、次のように述べている。なお、これは万古普遍の名言であり、我々投資家が永遠に胸に刻むべきものである。

“An investment operation is one which, upon thorough analysis promises safety of principal and an adequate return. Operations not meeting these requirements are speculative.”(“Security Analysis”1934, Graham, Dodd)

 「投資とは、(投資先の)充分な分析を行った結果、元本と適正なリターンを約束する活動のことである。一方、その要件を満たさない活動を投機と呼ぶ」(筆者訳)

 グラハムの投資理論の基本は「充分な分析」であることがここに見て取れる。「充分な分析」を徹底することにより、元本の安全性と収益(配当、売却益を含む)を確保することを目指すわけだ。その意味で、いたずらにチャートの動きに着目し、短期の利ざやを獲得しようといった類の活動は「投機」とされる。

 グラハムはさらに、「投資家は、投資先の株式を所有することにより、その会社のオーナーの一人になるということを自覚しなければならない。そのような自覚とともに、オーナーとして株価の動き、特に短期における値動きに、いちいち心惑わされてはならない。なぜなら、株式が「充分な分析」のもとに適正に評価されているのであれば、株式市場は「選挙機能」として働くし、長期的には「体重計」として機能するからである(筆者注:株式が適正に評価されていれば、株価は「適正価格」に収斂されるので心配はないという意味)」という。

 グラハムのいう「充分な分析」は、彼の著書にうたわれるSecurity Analysis(株式分析)に象徴される。グラハムはいう「投資家は、株式投資を実行する前に、必ず投資先の財務を分析しなければならない。財務を分析することによって、投資家は、財務の安全性を確認できるし、さらに、投資の趣旨である「割安」な株式を発見することの確率を高められるからである」。

 いたってシンプルな警告であるが、これが一般的に実行されないのは周知のとおりである。ライブドアに投資をした24万人のデイトレーダーの一部が、上に挙げたグラハムの警告に従っていたとしたら、ここまで被害が拡大することはなかったかもしれない。

 グラハムの理論が「充分な分析」を基本とし、その中心が投資先の「財務分析」にあることはすでに述べた。では、投資先の「財務分析」を行うに際し、グラハムはどこをどのように見ているのであろうか。
(次回へ続く)