グラハムの投資理論を学ぶ:防御型投資

6)割安な株価

 投資先企業の株価について、グラハムは「投資先企業の株価は、その企業の過去三年間における平均利益額(一株あたり)の15倍を超えてはならない」とする。いわゆる低PER株を選べとする考え方である。ここにも、グラハムの保守的な思想が見て取れる。

7)資産

 投資先の資産については、「投資先の直近の株価は、その会社の直近時価の1.5倍を超えてはならない」としている。これも恐ろしく保守的な発想であるが、後に解説するMargin of Safety(安全域)のコンセプトの基礎となる発想でもある。なお、投資先の資産と株価との関係については後に詳述したい。

 グラハムの株式評価方法を7つのポイントにまとめてみたが、いずれも大変に保守的であることが理解されよう。繰り返しになるが、グラハムの投資理論とは、株式に投資していかに手っ取り早く儲けるかが主旨ではなく、いかに安全に儲けるかが主旨なのである。そして、安全性を担保するにあたり、投資先の株価が割安であることを条件とし、それが招来値を戻し、かつ、成長することにより着実に利益を取ろうという発想なのである。

 あえて言わせていただくが、ライブドア株で損失を蒙ったデイトレーダー達は、グラハムにしてみればただの「愚か者」であったはずだ。グラハムは、チャーチストのようないい加減な輩を憎み、すべての株式市場参加者に「賢明であれ」と願っていたはずだ。投資家が「賢明」であれば、少なくとも財産をゼロにするような愚かな投資行為はしないであろうと考えていた。その彼の思いが、彼の代表著作にモIntelligent Investorモ(賢明なる投資家)という書名を付けさせたと思われる。

なお、グラハムの弟子であるバフェットは、師のこの投資理論、Value investing(バリュー投資法)に若干改良を加え、後の大成功をおさめた。それは、企業の将来価値を現在のバリューに加え、その割引率を株価に照らすことで割安感をはかろうというものである。しかし、バフェットにおいても、グラハムのバリュー投資法がその基本にあることを忘れてはならない。バフェットは、バリュー投資法のバフェットの時代における不整合に着目し、その問題点を克服することにより成功をおさめたのである。なお、バフェットの投資理論については改めて読者と検討してみたい。

 さて、ここで出された概念 Margin of Safety(安全域)について少々解説せねばなるまい。次回からはそれについて説明しよう。