グラハムの投資理論を学ぶ:バブル経済の形成

 最近のライブドア事件を含め、我々が面するバブル経済にはひとつの共通項がある。それは、投資家の欲望がバブル経済を形成するというものである。ここで翻るが、そもそも我々はなぜ投資をするのであろう?それは、言わでものことであるが、儲けるためである。儲けよう、儲けたいという欲望が、我々をして投資を行しめるのである。後に紹介するシカゴ学派経済学者の大家マルキールは言う。「貪欲さが一世を風靡するというのが歴史上の投機ブームに共通の基本要素である。カネ欲しさのあまり、市場参加者は全員、ファンダメンタルズ理論をあっさりと投げ捨て、砂上の楼閣を築くことで巨万の富が得られるという、疑わしいがスリル満点の考えにとりつかれる。このような風潮が国中に蔓延することもありえるし、実際そうなった例も多い」

 「砂上の楼閣理論」については改めて説明したいが、ここではバブル経済の形成に話をまとめよう。バブル経済とは、つまり、投資家(投機家)の欲望を必要条件とした、ひとつのマネーゲームとして定義できるであろう。グラハムの定義する「安全域」を無視した時の「株価」を対象にしたマネーゲームである。「株価」が上昇しているからその株を購入し、「自分より愚かな人間がそれをより高値で購入する」という、まさに「ババ抜き」的マネーゲームである。

 さて、この辺で我々は歴史から学ばねばならない。人間に欲望というものがある限り戦争が行われるとされるが、同様に人間に欲望というものがある限りバブル経済は今後も形成され続けるであろう。過去から学ぶことはいずれにせよ必要な事である。最近の我が国を直撃したバブル経済を振り返るのもそのひとつに該当するが、もう少し前に発生したバブル経済を見てみよう。そこから人間というものがいかにおろかで、また、いかに歴史からまったく何も学んでいないということが見て取れる。

 バブル経済の歴史の中でもっとも劇的かつ有名なのは、16世紀後半にオランダで発生したチューリップバブルであろう。ここで言うチューリップとは、まさにオランダを代表する花であるチューリップのことであるが、この、今でこそ一般的な花の、しかもその球根をめぐって、時の人々は壮絶な投機合戦を展開したのである。人の欲望とはここまで人を異常にするかと現在の我々は疑問に思うかもしれない。しかし、そう思う我々にしても、最近のライブドアバブルによって踊らされていたのである。要は、投機の対象がチューリップなのかライブドア株かの違いだけである。ライブドアの場合は、投機合戦の主宰者が投資先の社長であり、結局はただの詐欺事件として終決したが、チューリップバブルは、オランダ国中を挙げて投機に熱中していたのである。しかも、最終的には周辺諸国を巻き込み、後の世界的景気低迷につながっていったのである。この辺は、前に紹介した映画「シンデレラマン」のくだりと共通する感がある。バブル経済は、その反動として長期的な経済不振を伴うのである。
(次回に続く)