ジェイコム事件について考える▼ダイジェスト版▲

★★★GW特別企画★★★第2弾★★★
あの衝撃事件を、もう一度!!

あの事件を今こそ再検証し、投資の教訓に!
私のHP上↓で年末に連載したコラムの
◆◆スペシャル・ダイジェスト版◆◆
今日と明日の2日間にわたってお届け!!

http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620



ジェイコム事件について考える▼ダイジェスト版▲12/12〜12/13

 2005年12月8日のみずほ証券によるジェイコム株売却ミス事件は、最大クラスの経済事件として記録されるだろう。同事件は、同日午前9時27分、同社売買担当者が「61万円以上の値段で1株売りたい」という顧客の注文を、「1円以上で61万株売りたい」と誤って発注したことから発生した。まるで小学生が起こしたとでも言うしかないようなお粗末な話である。

 ところでこの事件は、我々に空売りの恐ろしさをまざまざと感じさせた。同事件は、発注ミスを指摘する警告メッセージにも気づかず進行したのだが、そもそも、発行済み株式の40倍もの株式売却を、株式市場取引システムが全体的尺度なり観察的機能をもってミスと指摘していたら、防止できただろう。これは取引自由の原則と照らすに、緻密な議論が要求される難しい問題であるが、これをきっかけにしっかり検討すべき問題だ。

 さらにこの事件は、インターネットの情報伝播力の凄まじさと、ネットデイトレーダーの躍如ぶりも露呈させた。多くのデイトレーダーが利用するYahoo!ファイナンスジェイコム掲示板には、誤注文発生からわずか4分後に「何これ?」「笑」と異変を知らせる書き込みが投稿され、その後も「何が起こったんだ?」「買いか?」「大もうけだ」と書き込みが続けられ、「買った?買えた?」「何株買ったぞ!」と具体的な行動の情報交換が更なる書き込みを呼んだ。善し悪しは別とし、我らネットデイトレーダーの特異性、優位性が大いに発揮された。

 また今回の事件は、株式投資におけるファンダメンタル分析アプローチの、基礎的弱点も露呈させた。ファンダメンタル情報の確度と非対称性は、学者間で問題点として指摘されていたが、今回の事件は学者の論争を尻目に、当事者のミスとして単純に発生した。そしてその結果、学者の議論をあざ笑うかのように、単銘柄の暴騰と市場全体の値下がりをもたらした。短期の異常株価は長期において収斂するという見解もあるが、ミスは完全には防げず、日常的に発生するものでもある。それらのミスが株式市場に与える、個別取引へのトータルサムのインパクトは小さくはない。

 いずれにせよ今回の事件は、当事者には再発防止の善後策の必要性と、一部の個人投資家には日常の取引には珍しい、短期的利益をもたらす結果となった。投資家必読の名著、アメリカの経済学者バートン・マルキールウォール街のランダム・ウォーク」の主旨は、数学理論であるランダム・ウォーク仮説を、ひとつの株式投資原理として理論化したところにある。シンボリックな例として「チンパンジーが経済新聞の株価覧にダーツを投げてつくったポートフォリオ」の話が描かれている。また、ファンダメンタル学派におけるひとつの誤謬として「道に落ちているお金」の記述もある。では、それを改めて読み返してみよう。

 「学者の間で人気のある、ファイナンスの教授と二人の学生についての次のようなジョークがある。ストロング型のランダム・ウォーカーであるこの教授は、市場は常に完全に効率的であると信じていた。たまたま彼が二人の学生と道を歩いていた時、10ドル札が道に落ちていた。一人の学生が急いでそれを拾ったところ、その教授は、『君はまだ分かっていないのかね、もしこれが本物の10ドル札だったなら、もうとっくに誰かが拾っているはずさ』と大声でたしなめたものだ。しかし、幸いにもこの学生は、ウォール街のプロに対しても、研究熱心な教授に対しても、それほど敬服していたわけではなかったために、10ドル得をしたのである」