アメリカのバブル事件:コングロバブル 1

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アメリカのバブル事件:コングロバブル 1

 シナジーSynergy)とは、ギリシャ語のSynergosを語源とする科学用語である。当初は薬学および医学の世界で使われ始め、その後物理学、化学に及び、今日では経済学、経営学の分野において使われている。本編において使うシナジーとは、主に経済学、経営学の世界で使われるシナジーと同義である。

 シナジーの元来的な意味は、分子等の構成要素1に別の構成要素1を加え、その結果、合成物の数量が2以上になることである。化学の世界では、このような現象を一般的にシナジー効果と呼んでいる。

 さて、本編の意味するシナジーとは、化学の世界と同様、ふたつの個別の企業が合併してシナジー効果をあげることを意味する。例えば、利益100億円を計上するA社と、利益200億円を計上するB社が合併し、合計で500億円の利益を生む会社になることを意味する。

 トロニクスバブルの終焉後、間もなく編み出された「シナジー」というキーワードは、トロニクスとは別の趣の魅力を投資家に提供した。当時の独占禁止法の影響により、同一の企業が同業他社を買収することはほとんど不可能であった。しかし、「同業」でない企業を買収することは比較的自由であり、また、「同業」でない企業を買収することは、買収企業に何らかの「シナジー」効果を与えるというイメージが一般的になっていった。そして、希望に溢れる「シナジー」の名のもとに、次々に企業買収が行われ始めた。

 当時、企業合併の建前として言われたことは、合併してコングロマリット(Conglomerate:複合企業と訳す)になることにより、金融力、製造力、マーケティング力、人事や管理等の経営効率の強化が期待されるということであった。実際、1960年代半ばに発生したコングロバブルの起爆剤になったのは、合併のプロセスそのものが1株あたりの利益を増加させるという点であった。つまり、コングロマリットの経営陣は買収した企業の収益力を向上させるよりも、小手先のテクニックを行使することにより合併企業の「収益性」が高まったように見せかけることに成功したのである。

 例えば、アメリカン電子という電器メーカーと、ボストンフーズという缶詰のメーカーがあったとする。そして、それぞれの発行済株式総数は20万株で、1965年時の年間利益は100万ドル、1株あたり利益は5ドルであったとしよう。また、両社とも事業は成長しておらず、両社が合併しようがしまいが、利益水準は今後も同じ程度で推移するものと仮定しよう。

 一方、両社の市場での株価が違っていたとすると話は若干違ってくる。市場の産業に対する評価はそれぞれであり、産業それぞれの成長性等から荒削りの評価がされ、結果的に、それらを組み合わせることで投資家の想像を逞しくするストーリーが生じるからである。
(次回へ続く)