アメリカのバブル事件:コングロバブル 2

★☆★ 賢者のコラム ★☆★

昨日から連載を開始した
アメリカのバブル事件:コングロバブル」 ★★本日2日目★★

前回のまでのあらすじ
→1960年代のアメリカでは「シナジー」の名のもと
 企業買収が行われた。「シナジー」とは、ふたつの企業が
 合併して1+1=2以上の効果(シナジー効果)をあげる
 ことである。
 コングロマリット(Conglomerate:複合企業)になることで
 経営陣は、買収した企業の収益力向上より、小手先のテク
 ニックで合併企業の収益性が高まったように見せかけた。

http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620



アメリカのバブル事件:コングロバブル 2

 例えば、アメリカン電子は成長性の見込める電器メーカーであり、市場は同社の株価収益率を20倍に評価しているとする。そして、ボストンフーズ社は単なる缶詰のメーカーであり、衰退気味の産業を嫌って市場は同社の株価収益率を10倍にしか評価していないと仮定する。

 一方、アメリカン電子の経営陣は何らかのかたちでコングロマリットになりたいと考えていたとする。そこで、ボストンフーズに目をつけ、同社を買収するにあたり、条件として2:3の株式交換を提案した。これによると、ボストン社の株主はアメリカン社の株式2株(市場評価による価値は200ドル)を、ボストン社の株式3株(市場評価による価値は150ドル)と引き換えに受け取ることになる。これは、ボストン社の株主にとっては極めて魅力的なオファーであるため、彼らは大いにこの提案を歓迎した。そして、間もなく合併は成立し、ひとつのコングロマリットが誕生した。

 アメリカン社主導で完成したコングロマリットはシナジック・コーポレーションと命名され、合併後の発行済株式総数33.3万株、利益総額200万ドル、1株あたり利益6ドルの、堂々たる会社として再スタートした。そして、同社の1株あたり利益は、5ドルから6ドルへと、何と20%も増加したのである。

 賢明なる読者はすでにお気づきであろうが、アメリカン電子とボストンフーズが合併し、経営的に何の改良も加えないのであれば同社の経営は以前とまったく変わりがない。両社はそれぞれ年間100万ドルの利益を計上するそれなりの会社であり、合併して変わったのは社名と発行済み株式総数のみである。しかし、市場はシナジック社の株価を20倍に評価し、その結果、市場におけるシナジック社の株価は120ドルで評価されることになる。

 ここで重要なのは、コングロマリットを構成する主宰者が誰であり、また、その主宰者がどの「産業」に属しているかということである。上のケースを参考にすると、シナジック社を構成する主宰者がアメリカン社ではなくボストン社であった場合、株価評価の低減により合併会社の株式の市場での価格は逆に低下する。

 さて、シナジック社が合併から一年後、新たな合併を目指してカリフォルニア・ミリタリーという、一見リスクの高そうな軍需関連の会社に目をつけたとしよう。カリフォルニア・ミリタリー社は、1株あたり利益10ドル、発行済株式総数10万ドル、時価総額100万ドルであったとする。そして、高いリスクを嫌い、市場は同社の株価収益率を10倍にしか評価していないと仮定する。そのため、シナジック社はカリフォルニア社に対し、1:1の株式交換をもって同社と合併することを提案するとする。カリフォルニア社の株主達は、自社の株式を同じ比率で1株120ドルのシナジック社の株式と交換できるので、この提案を拒否するはずがないものとしよう。
(次回へ続く)