★☆★ 賢者のコラム ★☆★ ライブドア事件に通ず!!〜
5月11日から連載を開始した
アメリカのバブル事件:コングロバブル」★★本日3日目★★

前回のまでのあらすじ
→1960年代のアメリカでは「シナジー」の名のもと
 企業買収が行われた。「シナジー」とは、ふたつの企業が
 合併して1+1=2以上の効果(シナジー効果)をあげる
 ことである。
 コングロマリット(Conglomerate:複合企業)になることで
 経営陣は、買収した企業の収益力向上より、小手先のテク
 ニックで合併企業の収益性が高まったように見せかけた。
 このような企業買収で誕生したシナジック社(アメリカン
 電子+ボストンフーズ社)という企業が、新たな合併を
 目指してカリフォルニア・ミリタリーという、軍需関連の
 会社に目をつけた。

http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620



アメリカのバブル事件:コングロバブル 3

 シナジック社によるカリフォルニア社の合併の結果、両社の利益総額は300万ドル、発行済株式総数43.3万株、1株あたり利益は6.92ドルとなった。以上のケースは、単独の企業が合併を繰り返し、「コングロマリット」になることによって企業が「成長」した例を示している。アメリカン社もボストン社もカリフォルニア社も、実質的にはいずれも全く成長していない。それにもかかわらず、同社らが合併したという事実のおかげで、表面的な情報を頼りにしている個人投資家の目には極めて魅力的に映るのである。

 さて、このあたりで合併を経たシナジック社の業績を見てみよう。

          1965年    1966年    1967年
シナジック社  5.00ドル    6.00ドル   6.92ドル

 一見したところ、シナジック社の業績は極めて良好に見えるであろう。高い成長性を維持しているため、同社の将来価値はさらに高まる可能性すら伺える。なお、このゲームを成立させるためには、市場評価の高い産業に属する企業が、自社より低い株価収益率の会社を株式交換で買収させることが必要条件になる。つまり、自社の実体を超越した市場評価をテコにし、低評価株を株式交換という隠れ蓑で包むことにより実体をおぼろげにさせるのだ。

 ここまで書くと、賢明な読者は既にお分かりになるであろう。この図式は、先日発生したライブドア事件で使われたスキームと同一のものである。ネット産業という、市場による評価の高い「産業」に属していたライブドアなる会社の株式を、通信販売、マンション販売、中古車販売という「低評価株」と「株式交換」して買収することにより、数字上のパフォーマンスを獲得したのである。言うまでもないが、ライブドアの営業利益上の株価収益率は一般よりも高くない。

 一方、買収される側にしてもこのスキームは魅力的である。買収されるボストンフーズ社は、アメリカン社に買収されない限りは単なる缶詰のメーカーであり、同社の株価は市場で株価収益率10倍の評価を受け続けるにとどまるであろう。しかし、市場の評価の高いアメリカン社に買収されることにより、合併会社シナジック社の一部となる同社の株式は、いきなり20倍の評価という恩恵を受けることになるのだ。そして、シナジック社がその後も企業買収を繰り返せば、1株あたり利益の成長速度も速まり、高めの株価収益率を正当化する材料となる。そして、晴れてシナジック社の株価は、「優良銘柄」としての体裁が整うのである。そして、「優良銘柄」としてのシナジック社は、先のライブドアと同様、買収を繰り返す結果事業そのものが複雑怪奇になり、一体何を行っている会社かわからなくなってゆくのである。新興の「コングロマリット」とは、往々にして得体の知れないものだが、突然出てくるこのような企業については、あらかじめ先入的な見方をしても良いのではないかと思われる。
(次回へ続く)