アメリカのバブル事件:コングロバブル 5

★☆★ 賢者のコラム ★☆★ 〜ライブドア事件に通ず!!〜
5月11日から連載を開始した
アメリカのバブル事件:コングロバブル」★★本日5日目★★

前回のまでのあらすじ
→1960年代のアメリカで行われた企業買収は、コングロマリット
 (Conglomerate:複合企業)になることで合併企業の収益性が
 高まったように見せかけるものであった。
 企業買収で誕生したシナジック社(アメリカン電子+ボストン
 フーズ社)という企業が、さらにカリフォルニア・ミリタリー
 という会社を買収。
 シナジック社の業績は表面上は極めて良好に見え、「優良銘柄」
 とされたが、買収を繰り返す結果事業そのものが複雑怪奇になり、
 一体何を行っている会社かわからなくなっていった。
 それでも投資家は、1株あたり利益が「成長」してゆくのを喜んだ。
 またコングロバブルのピーク時に一世を風靡したファジー・インタ
 ーナショナルという企業は有名だ。

http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620


アメリカのバブル事件:コングロバブル 5

 コングロバブルにおいてウォール街を欺いたのはファジー氏だけではない。一連のコングロマリット企業が、投資家を幻惑するための新しい言葉の数々を生み出し、多用した。例えば、造船事業は「総合海洋システム事業」になり、亜鉛採掘事業は「宇宙鉱物エクスプローラ事業」に、鉄鋼製造業は「複合素材テクノロジー事業」に、また、照明器具と鍵の製造業は「総合安全サービス事業」にと、それぞれそれらしい事業名に改められた。そして、これらの魅惑的な事業が複合的に統合されるにおよび、事業のシナジー効果は高度に発揮されるものであると誰もが信じて疑わなくなった。

 一連のコングロバブルにおいて、夢のような成長性に疑問をさしはさむものが皆無であったわけではない。アナリストの中には、当時の典型的なコンゴロマリットの経営者に対し、「大胆」にも「おたずねしますが、ガラスの製造業からどのようにして年率20%もの成長性が引き出せるのですか?」と質問した者もいた。それに対し、経営者は、「わが社の有能な専門スタッフが、統合により誕生する企業の何百万ドルものコストを削減することを可能ならしめる」とか、「マーケットリサーチの結果、全く未曾有の新市場を発掘した」などと回答したものである。さらに、これらの話に、「なお、この結論は今朝の朝食会議で得られたものである」とでも付け加えられれば、勤勉で有能な、成長途上の会社というイメージが完成するのである。

 ライブドア事件も同様であったが、数字のからくりを利用して成長を演出しようとする場合、経営者の語る言葉が大局的になり、また、言葉の端々で訳のわからない単語が多用されるようになる。当時のコングロバブルにおいては、「マトリックス」「コア・テクノロジー」といった言葉が多用され、ウォール街における時代的キーワードとして使われている。投資家サイドとしては、投資先の経営者が訳のわからない言葉を多用し出した際には、十分な注意を払う必要があるであろう。

 さて、他のバブルと同様、コングロバブルにも終末の時がやって来た。トロニクスバブルの時は、インサイダーによる利食いの動きから崩壊が始まったが、コングロバブルの終わりは、コングロバブルを代表する企業の業績悪化のニュースに端を発した。1968年1月19日、コングロマリットの元祖というべきリットン・インダストリーズ社は、第二四半期の収益が当初予想値を大幅に下回ると発表した。ほぼ10年間に渡り年率20%の利益成長を続けてきた同社の業績悪化のニュースは、同社の錬金術を信用しきっていた市場に大きな衝撃を与え、大きな失望とショックを呼び起こした。その直後、市場では売りが殺到し、コングロマリット株は一日で軒並み40%も下落し、ようやく下げ止まった。売りは翌日も続き、コングロマリット株は、文字通り馬脚を現すが如く、下げを続けながら実体の数値に近づいていった。そして、同年7月には、米国連邦取引委員会が、コングロマリット企業の合併動向の徹底調査を行うと急遽発表したのである。
(次回へ続く)


** 「アメリカのバブル事件:トロニクスバブル」は5月1,2,8〜10日の5日間に連載 **