アメリカのバブル事件:コングロバブル 6

★☆★ 賢者のコラム ★☆★ 〜ライブドア事件に通ず!!〜
5月11日から連載を開始した
アメリカのバブル事件:コングロバブル」★★本日6日目、最終日★★

前回のまでのあらすじ
→1960年代のアメリカで行われた企業買収は、コングロマリット
 (Conglomerate:複合企業)になることで合併企業の収益性が
 高まったように見せかけるものであった。
 合併企業の表面上の業績は極めて良好に見えたが、買収を繰り
 返す結果事業そのものが複雑怪奇になり、一体何を行っている
 会社かわからなくなった。
 それでも投資家は、1株あたり利益が「成長」してゆくのを
 喜んだのだが、そんなコングロバブルも終末を迎えた。
 発端はコングロバブルを代表する企業の業績悪化のニュース。
 市場では売りが殺到し、米国連邦取引委員会はコングロ
 マリット企業の合併動向の徹底調査を行うと急遽発表した。

http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620


アメリカのバブル事件:コングロバブル 6
 
 1968年7月に発表された米国連邦取引委員会によるコングロマリット企業の合併動向調査を受けて、コングロ企業の株価はさらに低下した。そして、遅ればせながらSECも、合併買収における会計テクニックの解明に重い腰を上げ始めた。市場では、弱い企業同士が合併するだけでは、単なる弱い企業の寄せ集めになるだけかもしれないという「可能性」に気づき始め、持ち前のコングロ企業株式をさらに売り広げた。そして、コングロバブルは1969年になって、一連のコングロ企業株式の崩壊をもって、終わりを告げたのである。

 コングロバブルは、株価収益率の業界平均の格差を利用した会計上のテクニックを基盤にしていたが、コングロバブルの反省として、そのようなテクニックは現在では利用できなくなっている。アメリカの会計制度と株式市場は、常にチェックバランスの歴史を歩むとされるが、まさにいたちごっこの状況の中で変革を続けてゆくのであろう。

 トロニクスバブルが新興株式の人気に存立基盤を置いたのに対し、コングロバブルは投資家の勉強不足を逆手に取ったものである。簿記の簡単な知識がある者であれば、合併した企業の財務内容や経営上の数値が、足し算以上のものになるわけではないことを理解できるであろう。しかし、コングロバブルで大金を失った多くの投資家は、足し算の検証すら行わず、ただ市場の評価のみを見て投資判断を下した。そして、企業の成長性を夢のように語るだけの経営者に対しても、常識的な範疇において経営戦略等を検証させようとすることもなく、ただ経営者の語るところを信じるだけに留まった。確かに、株価が上昇を続けているという事実そのものは重要である。しかし、その上昇を裏付ける根拠を知ることはもっと重要なことであり、根拠の精度と信頼性が厳しく問われなければならないのである。

 コングロバブルにおいても、底流に流れ続けていたのは投資家の欲望である。トロニクスバブルを支えた投資家の欲望が、時を待たずにコングロバブルを支えることになったのは、実に歴史の皮肉である。アメリカではその後、低迷の1970年代を経て、1983年において第三次新興株式ブームと、第二次コングロバブルと呼ぶべきLBO企業買収ブームが発生している。そして、アメリカのバブルはその後もコンスタントに発生し続け、最近ではドットコムバブル、バイオバブルを発生させている。バブルがもはや避けて通れぬものであるとすれば、投資家は、自分のお金を守る知恵と技術を持たなければならないであろう。

 さて、数週に渡ってアメリカで発生した一連のバブルについて解説してきた。次回からは少々趣向を変え、過去のバブルを構成したとされる経済基礎理論である「砂上の楼閣」理論について解説してゆこう。


** 「アメリカのバブル事件:トロニクスバブル」は5月1,2,8〜10日の5日間に連載 **