砂上の楼閣理論を解説する 2

投資で勝てる人は、実は一握り
正しい知識を身につけ、知的投資家になろう!

5月19日から始まった「砂上の楼閣理論を解説する」
★★★好!!スタート★★★本日2日目★★★


前回までのあらすじ
→ファンダメンタルズ学派に対す学派の筆頭
 砂上の楼閣理論学派、その主張は投資先の
 ファンダメンタルズを把握することは不可能
 または把握すること自体に意味がないとする
 ものである。
 同学派の重鎮ジョン・メイナード・ケインズ
 は、プロの投資家は大衆投資家が将来どの
 ように行動し、希望的観測がどのように砂上
 の楼閣を作り上げるかを分析するべきと唱え
 た。


http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620


砂上の楼閣理論を解説する 2

 ケインズが名著「雇用、利子および貨幣の一般理論」を記したのは、世界恐慌に象徴される経済の世界的激動期である。この時代の人民は、ケインズが主張した総需要拡大金融政策に多大な期待を寄せていた。レッセ・フェール的な経済の自由放任主義では、その揺り戻しの結果としての景気回復が望むべくもなく、政府による積極的な市場介入が改めてフォーカスされていた。そして、そのような時代においては、砂上の楼閣を築くといったような贅沢は望むべくもなく、また、誰かがそのような大それたことをするかもしれないなどと想像することすら出来ない状態であった。しかし、そのような状態にもかかわらず、ケインズは自著において、まるまる一章を割いて、株式市場と投資家の期待の持つ重要性について言及しているのである。

 株式および株価についてケインズは、そもそも投資先企業の将来収益見通しや配当性向がどうなるか誰にも正確にはわからないと主張する。そして、その前提の上で、ほとんどの投資家は、金融資産を長期間保有した場合にもたらされるであろう収益を正確に予測しようなどとは考えず、あくまでも一般投資家よりも少々早い段階で、一般的に受け入れられている株価水準の変化を予測することの方により高い関心を持つというのである。つまり、別の言い方をすれば、ケインズは株式市場を考える拠り所として、ファンダメンタルズ分析に代表される金融資産性評価の観点ではなく、群集心理の原理、一般投資家の集団的心理の状態や内容、およびその方向性を重視したのである。

 つまり、ケインズは、経済学でいうところの増分効用の源泉を、投資先のファンダメンタルズという一見したところ確実で堅実に見える「実体」に求めたのではなく、その会社の株式を実際に購入する投資家のセンチメントという、インタンジブルでうつろな、そして往々にして気分的なものに求めることにより、ゲームに勝とうとしたのである。

 ケインズはさらに、このようにも書いている「それがもたらす期待収益から見れば30ポンドの価値があると考えられる投資対象でも、もしその市場価格が20ポンドに下がると分かっているなら、それに25ポンドも払うことはまったく馬鹿げたことだ」と。

 話はそれるが、ケインズが主張した砂上の楼閣理論を乱用して、チャート分析におけるいくつかのパターンに投資家群集心理をリンクさせようという輩が少なからず存在している。例えば、ある特定のパターンで株価の底値が発見される根拠として、その日の商いの大小と、振幅のレシオにある種の相関が認められるといった類のものである。しかし、これらいわゆるチャーチストの主張は、ケインズが主張するところの砂上の楼閣理論とはまったく隔絶したものが多い。それらのほとんどは、単なる競馬の予想屋的発想に過ぎないものが多く、内容も陳腐で浅はかなものが多い。繰り返しになるが、ケインズの砂上の楼閣理論は、あくまでも彼の、珠玉の経済学的アプローチの賜物なのである。
(次回へ続く)