砂上の楼閣理論を解説する 3

投資で勝てる人は、実は一握り
正しい知識を身につけ、知的投資家になろう!

5月19日から始まった「砂上の楼閣理論を解説する」
★★★好・評・連・載・中★★★本日・3日目★★★


前回までのあらすじ
→ファンダメンタルズ学派に対する学派の筆頭
 砂上の楼閣理論学派、その主張は投資先の
 ファンダメンタルズを把握することは不可能
 または把握すること自体に意味がないとする
 ものである。
 同学派の重鎮ジョン・メイナード・ケインズは、
 そもそも投資先企業の将来収益見通しや配当性向
 がどうなるか誰にも正確にはわからないと主張
 した。株式市場を考える拠り所として、群集心理
 の原理、一般投資家の集団的心理の状態や内容、
 その方向性を重視したのだ。


http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620


砂上の楼閣理論を解説する 3

 賢明なる我が読者は、ケインズが主張した有名な美人投票論」を耳にしたことがあるであろう。ケインズは、当時のイギリス市民であれば誰でも理解できるたとえ話として、この「美人投票論」を説明した。これは当時、ロンドンのある大衆紙が、アトラクションとして定期的に新聞紙上に100人の美女の顔写真を掲載し、不特定多数の読者に6名連記で投票させた催しのことである。そして、この「美人コンテスト」で読者が全員で選んだ美女達に、最も近い投票をした読者に、多額の賞金が与えられるというものであった。

 さて、この「美人コンテスト」に勝つためには、読者個人の美的感覚は全く無関係であるということに気づくであろう。勝利への投票戦略は、自分が美女であると思う顔を選ぶのではなく、あくまでも他の読者達が美女であると思うであろう顔を選ぶことなのだ。

 しかし、この理屈は、一方ではとてつもなく拡散してゆくとも考えられる。結局のところ、この「美人コンテスト」は不特定多数の読者が同じような目論見で参加しているゲームなのである。したがって、この場合の最適な投票戦略の要諦は、何が平均的なコンセンサス、最大公約数的な意味におけるコンセンサスに関する、不特定多数の参加者の平均的な見方を予測するところにある。

 さて、この「美人コンテスト」のアナロジーは、株価形成に関する砂上の楼閣学派の考え方を最も端的に示している。買い手が支払ったよりも高い価格で他の誰かにそれを売りつけることが出来る見通しが立てば、どんな投資でもそれなりの意味を持つというのだ。つまり、投資は言うなれば自己増殖的なプロセスであると考えられる。買い手は将来他の誰かが、自分が買った価格よりも高い価格で買ってくれることが期待できるからこそ、投資を行うのである。

 そのような世界では、絶えず馬鹿な人間が、常に新たにゲームに加わってくることを前提にしている。そして、自分が支払ったよりももっと高い値段で買い取ってくれることになる。そして、その馬鹿よりももっと馬鹿な人間も存在し、彼が支払った値段よりもさらに高い値段で買い取ってくれることを想定しているのだ。

 このゲームはつまり、「より馬鹿理論」とでも別名がつけられるかもしれない。株式のファンダメンタルズなどという面倒くさいことはさておき、自分の買った価格よりも高い値段で買ってくれる「馬鹿」の存在が重要であり、さらに言うなれば、その「馬鹿」の程度が甚大であれば甚大であるほど良く、果てには、「馬鹿」の絶対数が多ければ多いほど良いということになるのだ。あなたが「ファンダメンタルズ」の2倍の価格で購入したとしても、どこかの「馬鹿」がそれを5倍で買い取ってくれたら、投資的には何の問題もないのだ。
(次回へ続く)