砂上の楼閣理論を解説する 5

投資で勝てる人は、実は一握り
正しい知識を身につけ、知的投資家になろう!

5月19日から始まった「砂上の楼閣理論を解説する」
★★★好・評・連・載・中★★★本日・5日目★★★


前回までのあらすじ
→ファンダメンタルズ学派に対する学派の筆頭
 砂上の楼閣理論学派。同理論は、株式の
 ファンダメンタルズよりも投資家の群集心理を
 反映した株式の値動きに着目する。
 これはテクニカル分析と呼ばれるもので、
 株価チャートをつくり、それに様々な解釈を
 与える。そのような活動を行う者を一般的に
 「チャーチスト」と呼ぶ。

http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620


砂上の楼閣理論を解説する 5

 チャーチストの多くは、投資対象企業のチャートを分析すること以外には注意を払わないものである。例えば、投資対象企業がどのような事業を営んでいるとか、どのような産業に属しているといったようなことには、ほとんど関心を示さない。なぜなら、チャーチストのほとんどは、利益や配当といったことに関するファンダメンタルズ情報を、良く言えば役立たず、悪く言えば相場を乱す攪乱要因と見なしているからである。つまり、ファンダメンタルズ情報は株価形成にはほとんど影響しないか、よしんば影響したとしても、ファンダメンタルズ情報に関係するニュースが公表された時点において、すでに株価に反映されてしまっているというのである。このような理由により、チャーチストの多くは、日々のチャートの動きを追うこと以外、新聞すら読まないと言われる

 例えば、チャーチストの信じる伝統的パターンとしてヘッド・アンド・ショルダー・フォーメーションというものがある。このパターンによると、ある時点で上昇に弾みがついた曲線は、上昇へのトレンドが持続されがちであることから、ネックラインとよばれる拮抗線を底辺としたリバウンドを構成する。そして、リバウンドから上昇へのパターンは、まるで女性の肩の曲線のような動きを示すことから、ヘッド・アンド・ショルダー・フォーメーションと呼ばれる。そして、チャーチストは、株価がネックラインを切る時、つまり、明確な売りのタイミングが現れる瞬間を待つのである。

 また、他の有名な伝統的パターンとして、ゴールデン・トライアングルと呼ばれる、我が国でも有名なものがある。これは、チャートを短期と中長期のそれぞれから俯瞰し、短期的には株価の直近の底値と最高値を三点とする三角形を描き、その振幅を計算しながら売り買いのタイミングを測るというものである。そして、三角形をひとつの構成単位とした、中長期における別の三角形を描こうとするものである。これによると、ほとんど全ての株価のチャートは大小の三角形によって構成され、その天井を計ることが可能であるという。そして、その黄金率は普遍であり、これを忠実に守ることにより、株価の動きを知ることが可能になるというのだ。

 ところで、チャーチストのほとんどは、過去の株価の記録であるチャートを分析の拠り所にしている。彼らは、過去を分析することにより未来を知ろうとする。そして、過去に起きたチャート上の動きは、すべからく近未来においても再現すると考える。チャーチスト達のこのような考え方は、一見したところ、天気予報の基本的アプローチに似ているとも思われる。天気予報は、過去の記録をもとに統計学的手法で未来を予測しようとする。実際に得られるデータや、例えば台風における過去の類似事例の研究を徹底することにより、明日の天気を占おうとするのである。しかし、実際の天気予報が必ずしも完璧でないように、チャーチストの信じるテクニカル分析も完璧ではない。テクニカル分析は、いずれにせよ致命的な誤謬を孕んでいるのである
(次回へ続く)