砂上の楼閣理論を解説する 9

投資で勝てる人は、実は一握り
正しい知識を身につけ、知的投資家になろう!

5月19日から始まった「砂上の楼閣理論を解説する」
★★★好・評・連・載・中★★★本日・9日目★★★


前回までのあらすじ
→砂上の楼閣理論学派は、株式のファンダメンタルズ
 より投資家の群集心理を反映した株式の値動きに
 着目する。これはテクニカル分析と呼ばれ、株価
 チャートをつくり、それに様々な解釈を与える。
 そのような活動を行う者をチャーチストと呼ぶ。
 しかしテクニカル分析は、チャーチストの独自の
 解釈に依存しているため、科学性と論理性が欠如して
 いる。また、チャーチストは、チャートという過去の
 記録は対象企業のファンダメンタルズを含んだ全ての
 特性を包含しており、分析対象としての密度が濃いと
 主張するのだが、その過去の蓄積情報のみに判断基準
 を置くことこそチャートの弱点なのである。

http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620


砂上の楼閣理論を解説する 9

 そういえば、企業の財務諸表というものは、女性の身に着ける下着と同じようなものであるというジョークを耳にしたことがある。つまり、財務諸表の見ばえや機能、あるいはそれが表現しているものも重要であるが、より重要なのは、「それが隠しているもの」なのであるという。女性の下着の見ばえや機能、あるいはそれが表現しているものも重要であるが、確かに、より重要なのは「それが隠しているもの」であろう。

 企業の財務諸表が隠しているものとは、業績が好調な企業の場合は課税対象科目、業績が不調な企業の場合は利益計算に関係する科目である。業績が好調な企業は、課税を回避するために、例えば在庫や仕入れといった科目において棚卸等をごまかすことによって計算上の利益を圧縮する。国税当局は、税務調査において、通常はこういった方面を対象に調査を行う。

 また、業績が不調な企業の場合、見かけ上の業績をよくするために架空売上を計上したり、原価を圧縮するために減価償却を引き伸ばしたりする。先のライブドア事件はこの典型であるが、架空売上の計上は、通常はグループ間において行われるため、外部の人間がそれを把握することはほとんど不可能であるとされる。ライブドア事件においては、司直の介入があって初めて真相が明らかになったが、似たような手法で売上を水増ししているケースは、少なくないと思われる。

 筆者は、会計原則においては法人性悪説をとるものであるが、会社の業績が好調であるにせよ不調であるにせよ、企業が財務諸表に自らの情報を完全な形で反映するケースはほとんど皆無であると考えている。会社が儲かったらできるだけ税金を払わないようにし、逆に赤字がでたらそれが表面に出ないようにしようというのが人の子というものである。一般に優良企業であるとされる松下電器トヨタ自動車にしたところで、当局との「見解の相違」によって修正申告を過去に少なからず行ってきているのだ。まして、新興企業における企業会計が、松下電器トヨタ自動車並の程度やコンプライアンスをもって行われているとは、筆者には到底信じることが出来ない。

 また、これも女性の下着と同様、企業の財務諸表は、隠したいものの内容が重要な場合、見かけの派手さとバラエティが豊富になる。若い女性が何種類もの下着を、それも華やかなバラエティに富んだものを数多く所有するのに似て、企業は隠したいものが多く、また、隠したい程度が甚だしい場合、様々な手段をもってそれを秘匿しようとする。これも先のライブドア事件に通じるが、架空売上を計上する場合においても、複数のスキームを縦横無尽に重ね合わせ、真相を二重にも三重にもして秘匿する。女性の下着の場合は、最終的にはターゲットに厳かに、神秘的な形で隠しているものを露にするが、企業の場合は、あくまでもそれを隠し通そうとする。その意味で、女性の下着と企業の財務諸表とは、表面上のロジックは似ているが、向かう方向が最初から逆であると言うべきかも知れない。
(次回へ続く)