ベンチャーキャピタルを解説する 1

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知的コラム☆「ベンチャーキャピタルを解説する」
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ベンチャーキャピタルを解説する 1

 筆者は仕事柄証券会社の人間と話をする機会が多い。また、最近はベンチャーキャピタルの人間と話をする機会も増えてきた。賢明なる我が読者はベンチャーキャピタルが何をする会社であるかご存知であろう。しかし、ベンチャーキャピタルがどのように投資案件を発掘し、また、発掘された投資案件をどのように評価しているかについて知っている方は少ないと想像する。前回までのコラムにおいては、ファンダメンタルズ理論の概要と、それに対峙する一般理論として砂上の楼閣理論を解説してきた。今回のコラムからは、ベンチャーキャピタルについて解説し、彼らの投資手法を読者と共に研究してみたい。

 さて、ベンチャーキャピタル(以下、単に「VC」と略す)は、アメリカにおいて誕生したとする説が一般的である。このような言い方をする理由は、VCのビジネスモデルは、実は極めて原始的であり、極端な例としては株式会社の発明をもってVCモデルと言えなくもないからである。株式会社とは、資本と経営を分離してリスクを分散する一方、リターンを最大化させるひとつの社会的装置である。その意味において、VCとは、株式会社のシステムと根源と目的が極めて類似している。

 しかし、このような議論を行うと、例えば人類最古の事業は貸金業と売春業であるとするといった経済学の「定説」と同じになってしまうであろう。いずれにせよ、ここでのVCについての議論は、あくまでも近代においてシステム化、ビジネスモデルがシステム化されたVCに限定することにする。

 ところで、近代的VCとは、金融業における銀行や証券業と同様、社会経済的事業としてある程度概念が一般化され、かつ、事業内容が平準化されたものと定義したい。その定義になぞると、近代的VCは、やはりアメリカで誕生した。現在の我が国で一般的に認識されているVCのビジネスモデルの原型は、1946年に設立されたARD(アメリカン・リサーチ・アンド・デベロップメント社)に求められるとする説が一般的である。ARD社は、第二次世界大戦終了後、必要とされなくなった軍事技術を民間に移転し、新たな事業として立ち上げるための直接金融供給会社としてスタートした。

 ARDの創業者で、ハーバード大学教授であるジョージ・ドリオ氏は、「アメリカのビジネス、雇用、国民の繁栄は、自由な企業体制のもとで新しい企業が続々と生まれてくることで保証される。新しい力、エネルギー、才能を育てるために、莫大な機関投資家資金の一部を投資しよう」とし、さまざまな企業への投資を実行した。ドリオ氏による近代的VCの発明は、後に一世を風靡するシュンペーターの創造的破壊の概念から遡ること甚だしく、その功績は人類史上において賞賛に値する。ドリオ氏は、VCの概念を打ち立てただけではなく、有名なDEC(デジタル・イクイップメント・カンパニー)等への実際の投資によって、アメリカ経済に莫大な収益ももたらしたのである。
(次回へ続く)