ベンチャーキャピタルを解説する 5

投資で勝てる人は、実は一握り
正しい知識を身につけ、知的投資家になろう!

知的コラム☆「ベンチャーキャピタルを解説する」
★★★本日・5日目★★★ お見逃しなく!!

前回までのあらすじ
ベンチャーキャピタル(以下、「VC」)
 は、アメリカで誕生した。近代的VCは、
 金融業における銀行や証券業と同様、
 社会経済的事業としてある程度概念が
 一般化され、かつ、事業内容が平準化
 されたものと定義したい。
 VCの一般的なビジネスモデルとは、
 ベンチャー企業に投資をし、育成し、
 Exitさせて売却益を得ることである。


http://www.wintrade.jp/pc/default.aspx?aid=7620


ベンチャーキャピタルを解説する 5

 VCとは投資会社であるはずだが、その投資会社がなぜベンチャー企業に資金を貸し付けてマネーを供給するのであろうか。この問いに対する答えは後ほど用意するが、プリミティブな我が国のVCにおいては、リスクマネーを供給し、かつ収益を上げる社会的装置としてのVCが、きちんと法的に整備されることなく今日に至ったことがその原因である。

ベンチャーキャピタルの実態と戦略』(W.D.バイグレイブ、J.Aティモンズ著)によれば、「クラシック・ベンチャーキャピタル投資とは創業企業に対する、融資やそれに類する形態でない、エクイティ投資による資金提供」と定義づけている。日本のVCにおける融資額の推移は、1995年には投資残高8,531億円に対し4,140億が融資残高であり50%近くが融資残高という状況であった。これはVCが大企業を含めた中小企業に対し不動産担保融資を行った結果であり、バブル崩壊とともに急激に融資残高を減少させたものと見られる。理由はともあれ、バイグレイブとティモンズの定義にしたがうなら、1990年代の日本におけるVCはおおよそベンチャーキャピタルと言える状態ではなかったといえよう。

なお、このような状況は、日本のVCの収益構造に関係があると思われる。アメリカのVCの収益は投資活動によるキャピタルゲインとファンドの管理手数料が主な収益源であり、この2つでコストを賄い利益を上げる構造である。一方、日本のVCの収益構造も基本的には同様ではあるのだが、実際にはキャピタルゲインと管理手数料では賄いきれず、貸付やリース業などで収益の不足分をカバーしていたというのが実情である。

あえてこれを弁護すると、例えば日本のVCの経営が米国のそれに比して劣っているというものではなく、歴史的に間接金融による資金調達環境の整備に重点をおいてきた日本においては、ベンチャーキャピタルの活動はおのずと限定的にならざるを得なかったといってやるべきであろう。特に、銀行系VCと呼ぶべき分類のVCが多数存在する現状を垣間見ても、このことはおのずから理解できるであろう。

話はそれるが、我が国のVCとは、上に論じたようにそもそも本来的なアメリカ型のVCではなく、銀行が融資するにはリスクがあり過ぎる企業に対し、銀行に代わって投資を行う、ある種のメザニン投資会社に過ぎない、という意見をよく聞く。確かに、メザニン投資という意味においては確かにメザニン投資であり、かつ、融資も並行して行っているのであれば、まさにメザニン投資会社ということになるであろう。特に、銀行系VCは、投資先を融資判断基準と同等および同様の指標で評価する傾向にあり、そのような外部の評価は的を得ていると言わねばならないであろう。しかし、筆者は、批判を恐れずに言うが、これからの我が国において望まれるVCの姿とは、斯様なメザニン投資を行う投資会社ではなく、あくまでもリスクテイクを率先して取り、かつ、それによりリターンを最大化する、まさにアメリカ型のVCであると信じる。それゆえ、銀行系VC関係者は特に、VC本来の存在意義について改めて熟考すべきであると考える。
(次回へ続く)