緊急コラム:村上氏逮捕について 後編

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緊急コラム:村上氏逮捕について 後編

 筆者は村上氏と直接の面識はないが、筆者の友人の一人である証券関係の人間は村上氏と大変懇意にしていたそうだ。同君によると、村上氏の人となりは誠実で温和とのことである。ある晩、六本木ヒルズにある高級レストランで食事をしていた同君は、偶然近くのテーブルにいた村上氏に声をかけられ、深夜であったにもかかわらず、ヒルズのレジデンスにある村上氏の自宅へ飲みに来るよう誘われたのだそうだ。連れの人間と恐縮しながら同氏の自宅へお邪魔すると、先に連絡を受けていた同氏の奥様と令嬢が盛装して同君らを玄関に迎え、ますます恐縮した同君らは、村上氏の居宅の広いダイニングルームで村上氏の秘蔵の洋酒をご馳走になった。一方、夫人と令嬢は、深夜過ぎまで手料理のおつまみを提供するなど、至れり尽くせりの歓待をしたのだそうだ。

 その日の翌日、感覚めやらぬ調子で筆者に電話をしてきた同君は、村上氏と村上氏の家族に感銘を受け、たいした人物であるとの評を下していた。

 先に逮捕された堀江と違い、村上氏個人を知る人間からは、不思議と悪評が聞こえてこない。聞こえてくるのは、あくまでも村上氏が優れた人物であるとか、頭脳明晰であるといった類の評判ばかりで、いずれもことごとく村上氏を賞賛するものばかりである。マスコミは村上叩きに終始しているが、実際の村上氏は、立派な人物であると断言する。

 筆者は、想像するほか術がないが、村上氏の今回の事件については、同氏においては正に魔が走ったとせざるを得ない気がする。村上氏は、堀江と懇意にしていたとも聞くが、当時絶好調の極にいた堀江率いるライブドア経営陣の上昇機運の雰囲気につられて、冷静な時の村上氏であれば絶対に行わなかったであろうことを何となく行ってしまったというのが実体であるような気がする。

 筆者は、村上氏の今回の事件を必ずしも弁護するわけではないが、村上氏を間接的に知る立場にいる者としては、今回の事件に関して村上氏を糾弾することだけに終始してはいけないとも考えている。問題は、インサイダー取引を巡るルールの共通化と徹底にあり、その精度を上げることにより、今回の事件の再発は、対象が村上氏程度の人物であれば、ほとんど完全に防止できると考えている。

 思えば、村上氏の影響力は、最初は静かに、しかし徐々に力強く増徴していった感がある。我が国の世論は、強さを増す村上氏の影響力に、世論という空気の力をもって、ある程度の抑止力とさせようとしたのかも知れない。

 いずれにせよ、筆者は村上氏の再起を願ってやまない。今回の事件が村上氏に与える影響は甚大であろう。しかし、それでも、筆者は村上氏がいつしか必ず復活を遂げると信じている。