ベンチャーキャピタルを解説する 7

投資で勝てる人は、実は一握り
正しい知識を身につけ、知的投資家になろう!

知的コラム☆「ベンチャーキャピタルを解説する」
★★★本日・7日目★★★ お見逃しなく!!

前回までのあらすじ
ベンチャーキャピタル(以下、「VC」)
 は、アメリカで誕生した。近代的VCは、
 金融業における銀行や証券業と同様、
 社会経済的事業としてある程度概念が
 一般化され、かつ、事業内容が平準化
 されたものと定義したい。
 VCの一般的なビジネスモデルとは、
 ベンチャー企業に投資をし、育成し、
 Exitさせて売却益を得ることである。




ベンチャーキャピタルを解説する 

 投資をするには「遅すぎる」はずのレイトステージのベンチャー企業に、多くのVCが投資を行っているということは、我が国VCの非VC性を物語る重要なストーリーのひとつになる。我が国のVCは、直接的な投資以外に、融資等の方法によってベンチャー企業に資金を供給していたことを前述した。リスクテイクを嫌うVCは、融資の名目でベンチャー企業に資金を提供し、ある程度の成長性が確定した段階になって投資に切り替えるというシステムを持つ。そして、レイトステージの段階においては、ほとんどただ乗り同然でマネーを供給してくるVCもいる。J社やN社等の大手を筆頭に、「銀行系」と言われるVCのほとんどはこの種の方法でVCに乗り込んでくる。よくもあからさまにずうずうしいことが出来ると思われるが、中には、レイトステージでIPO確実な企業に、我も我もと「割り当て」を求めてくる。その姿たるや、もはやVCと呼ぶべきものではなく、単なるタカリの手合いとしか思えない。

 話はそれるが、以前に大手VCが投資した案件のセカンダリ・バイアウトを手伝ったことがある。セカンダリ・バイアウトとは、VCが投資した案件で、IPO出来ない企業を、M&A等で他社に売却して投資資金を回収する事を言う。その際、リードを取っていた同社でさえ、投資先の事業性を含めたフィージビリティを検証していた痕跡がなく、面食らったことを良く覚えている。ある時、その担当者になぜこの会社に投資したのかと聞いたことがある。それに対し、担当者の答えは、「最大手のJ社が出資していたことと、系列のM銀行の勧めがあった」というものであった。この答えこそ、我が国VCの一般的な体質を物語っている。

 なお、リードとは、VCが投資をするにあたり、最速かつ最大のシェアを取るスタンスを意味する。VCによる投資は通常、複数のVCによって行われ、その中で一番早く、かつ一番大きなシェアを取って主体的に動くことをリードと呼ぶ。VC投資においては、「誰がリードを取るのか」ということも投資戦略において重要になる。

 ここでさらに話はそれるが、「誰がリードを取るのか」ということがなぜ重要なのかを説明したい。我が国のVCは、大雑把に言って証券系、銀行系、事業会社系、独立系、外資系に分類される。証券系では、野村證券を母体とするJAFCOが代表するであろう。銀行系は、各都市銀大手の子会社が軒並み存在する。事業会社系は玉石混交で、一時問題になった光通信の子会社や、半導体関連企業を対象にするインテルの子会社等が例として挙げられる。独立系は、VC出身者が独立して立ち上げたケースが多く、比較的小規模である。フューチャーVCといったところが代表例であろう。また、外資系は、最近は大分撤退してしまったが、一時はアメリカを中心とする外資VCが国内ベンチャー企業を総ざらいしていたものである。今にしてみれば懐かしく思うが、片言の日本語で我が国のベンチャー企業を片っ端から電話していた外人キャピタリストが大勢いたものである。彼らの多くは帰国してしまったが、往時を思うに、一時は外資系VCが幅をきかしていたものである。
(次回へ続く)