ベンチャーキャピタルを解説する 8
投資で勝てる人は、実は一握り
正しい知識を身につけ、知的投資家になろう!
知的コラム☆「ベンチャーキャピタルを解説する」
★★★本日・8日目★★★ お見逃しなく!!
前回までのあらすじ
→ベンチャーキャピタル(以下、「VC」)
は、アメリカで誕生した。近代的VCは、
金融業における銀行や証券業と同様、
社会経済的事業としてある程度概念が
一般化され、かつ、事業内容が平準化
されたものと定義したい。
VCの一般的なビジネスモデルとは、
ベンチャー企業に投資をし、育成し、
Exitさせて売却益を得ることである。
VCによる投資は通常、複数のVCによって
行われ、その中で一番早く一番大きな
シェアを取って主体的に動くことをリード
と呼ぶ。
ベンチャーキャピタルを解説する 8
誰がリードを取る、ということがなぜ重要なのであろうか。ここで、例えばあなたがあるビジネスを思いついたとして、事業資金をVCから調達することにしたとしてみよう。当座必要な資金が総額で1億円であるとした場合、VCが単体で1億投資することはまずありえない(と言うよりも、絶対にありえないと断言しておく)。特に、最近はどこのVCもリードを取ることに慎重であると言われ、大手のVCの場合は単体で過半数以上のシェアを取るような投資はまず行わないと言われている。
さて、事業資金を調達するために、多くのVCに足を運んだあなたは、ほとんどのVCから門前払いを食らうであろう。一般的に言って、我が国のVCはいわゆるシードのベンチャー企業にはほとんど絶対に投資をしない。売上の立っていないベンチャー企業などとは、投資をする側にしてみれば危険この上ない存在なのである。
そこで、地道に事業を開始することにしたあなたは、とりあえず自分の退職金と、親類縁者からの借入金で事業資金をまかなったとする。そして、運良く事業開始から数ヶ月で、とりあえず月間売上が100万円程度見込めたとする。そして、このあたりでもう一度VCへ相談にいくことにしたとする。
しかし、この段階でもあなたの努力は徒労に終わるであろう。我が国のVCは、この段階、つまりスタートアップの段階においても投資は行わない。ベンチャーの売上など、吹けば飛ぶようなものであり、それが継続的に獲得できるとは誰も保証できないからだ。このあたり、銀行における融資の姿勢とほとんど同じであろう。銀行としては、口座を開設したばかりの企業には貸付は絶対に行わず、ある程度の実績、毎月の売上入金や預貯金の確認が取れた段階、一般には「数年程度」と言われているが、が確認できた段階で、そろそろ「ところで、事業資金はご入用ですか?」と持ち出してくるのである。
なお、Googleの創業者二人は、自分たちの開発したアルゴリズムを、スタンフォード大学の学内ネットワークで実証実験し、それを公開してビジネスにすることを思いついた。このアイデアを、いくつかのVCに持ち込んだところ、ある一社から早速アポイントメントが取られ、面会を求められた。二人で指定の場所に行き、VCにGoogleのビジネスモデルを説明したところ、そのキャピタリストはいきなり白紙の小切手を手渡し、「これに好きな金額を書き入れてくれ、足りなければ後日いくらでも用意する」と言われた。仰天した二人に、そのキャピタリストは、「さあ、早くしてくれ、一緒にこのビジネスをモノにしよう」と促したと言われる。いまや伝説となったこの逸話は、アメリカのVCというものがいかに機動力に富み、また、ビジネスの芽を見つけることにいかに秀でているかを物語っている。残念ながら、我が国においては、この夢のようなGoogle的ストーリーは、今後も当分は生まれてこないものと思われる。
(次回へ続く)