ベンチャーキャピタルの投資テクニック 5

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ベンチャーキャピタルの投資テクニック 5

 株価を超越したプレミアム、即ち営業権は償却資産となるため、最近までのITベンチャーM&Aにおいて多用されてきた。楽天M&Aの一環としてインフォシークを買収したケースはその典型例であるが、インフォシーク時価総額をはるかに超えた金額を楽天は売主に支払い、手中におさめた。この種のM&Aにおいては、財務的および税務的戦略が経営戦略と連動するが、インフォシークの集めるトラフィックがプレミア相当分として妥当であり、かつ、利益を相殺する当て馬として妥当であるという判断が、時の経営陣によりなされたと考えられる。その意味で、この営業権、一般的には「暖簾代」と呼ばれるが、は、税効果会計的価値を持つものであると言える。

 なお、上の営業権は、アメリカではグッドウィル(Goodwill)と呼ばれ、M&Aにおける財務的観点から特に重視されている。拡大期にあるベンチャー企業M&Aを繰り返すことの本質的な背景には、このグッドウィルが必ず存在する。

 ここで注意をしておきたいのは、ベンチャーキャピタルが投資先企業の株価評価を行う場合には、通常はグッドウィルを考慮しないという点である。これは、事業会社とVCの決定的な相違点であるが、VCにおいては、営業利益的な発想がそもそもないため、投資先のグッドウィルを税効果的な観点から評価する必然性がないことによる。つまり、VCがグッドウィルを期待してベンチャー企業を買収し、それを当期中に償却して課税を回避するという発想や行動がとられないのだ。あえて例外を言えば、投資先のベンチャー企業が、エクジットとしてM&Aを想定されたとした場合において、売り先の企業における税効果を鑑みて、その上で投資先のベンチャー企業グッドウィルを予め織り込んでおく、ということは考えられなくもない。しかし、いずれにせよ、それは極めて特異なケースである。

 営業権の意味は広く、それぞれの意味が違うことがお分かりいただけたであろう。なお、私見であるが、我が国の会計制度においては、本質や意味が違うにもかかわらず同じ用語が使われたりするケースが多い(例:無形固定資産と有形固定資産における減価償却)。投資的観点から株式の評価を行う際には、それぞれのアスペクトにおける用語の意味を、しっかりと把握しておく必要がある。

 時価純資産方式による株価の算定は、以上のように対象企業の負債と資産のすべての科目を時価換算し、それにより資本の額を求め、発行済み株式数で割ることによって行われる。ここでのポイントは、「時価」の適正な値を求めることであり、また、将来的な意味合いや可能性を含めて評価することにある。例えば、対象企業が特許や知的所有権を資産として所有していた場合、それの現時点での「時価」を正しく求めると同時に、それの将来的な価値を正しく見極めることが重要になる。これは、特にIT系ベンチャーやバイオ・創薬ベンチャーにおいて重要なことであり、ベンチャーキャピタリストには正しい目利きを行うことが求められる。
(次回へ続く)


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閑話休題 サンケイビジネスアイコラム掲載に寄せて

 産経新聞の経済紙であるサンケイビジネスアイ紙面上で、小生がコラムを執筆することになった。産経新聞と言えば、小生がこよなく尊敬する司馬遼太郎、本名福田定一が記者をしていた由緒ある新聞であり、執筆については甚だ光栄の感を覚える。同紙は全国紙でもあり、いささか緊張と興奮を禁じえないが、我がブログ読者にもご一読いただき、願わくばご意見ご批判を賜りたい次第である。

 全国紙でのコラム執筆は小生にとって初体験であるが、ブログとは違った難しさを感じている。まず言えるのは、新聞のコラムでは原稿の失敗が許されないということである。原稿の装丁等については、校正の段階で誤字脱字などが厳しくチェックされ、文法上のミスはまず発生しない。新聞は特に、それを専門に行う部署が専門の機械でチェックを行っている。しかし、問題なのは、原稿の内容そのものにミスがあったとした場合、例えば、何らかの数字や年次、あるいは歴史上の出来事や事件といった事実そのものにミスがあったとした場合、掲載後では取り返しがつかなくなるのだ。そのため、執筆に当たっては慎重に調査を行い、何度も内容を精査した上で原稿を入稿する(なお、失敗があったとしても後日修正の掲載をすれば良いではないかと言う意見を聞きそうだが、その手の修正は、新聞の世界ではまずありえない)。

 一方、上のことは、とどのつまり我がブログにおいて執筆上の手抜きをしているという事にはつながらない。弁明をするようだが、ブログの場合、事実に相違があったとした場合、極端な場合、文章の差し替えや修正でいつでも対応が可能であり、逆に、差し替えを行うことにより文章の内容を向上させてゆくことも可能になる。例えば、小説にこのような手法を用いることによって、小説の内容を、際限なく進化させてゆくことが原理的には可能となる(なお、小生は経済小説の執筆を画策しており、この手法を実際に用いることを検討している。この構想についてはいずれ我が読者に打ち明けたいと考えている)。しかし、新聞とは、掲載された事実がほぼ永久的な事実となってしまうため、この種の発想法がまったく通用しない。

 以上のように、新聞のコラムとブログのコラムとは、チェスと将棋ほどの相違点があるのである。それぞれにおいてそれぞれの要求があるが、いずれにせよ、それぞれに最適なかたちで執筆するほかないと覚悟している。

 なお、本編がブログに掲載される頃には新聞コラムの第一弾が既に掲載されていることであろう。ご興味のある読者は、平成18年6月30日金曜日発売のサンケイビジネスアイをご覧戴きたい。小生の悪文が、恐れ多くも読者の目に入ることであろう。


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ベンチャーキャピタルの投資テクニック 4

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ベンチャーキャピタルの投資テクニック」本日4日目!!


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ベンチャーキャピタルの投資テクニック 4

 例を続けよう:

資産の部            負債の部
現金 100万円         借入金 150万円
売掛金 50万円
株式 50万円
土地 100万円
営業権 50万円         資本  200万円

この場合、計上された数字のうち、絶対的なものは現金、売掛金、借入金であろう(厳密に言うと、例えば国際会計の範疇に話を及ばせた場合、現金は絶対的ではなくなる。なぜなら、米ドルをベースとした場合、通貨の相場が相対性を生じさせることになる。いずれにせよ、ここでは話を単純にするためにそのようなことは考慮しないこととする。また、売掛金も未回収リスクを考慮すると、厳密には絶対的であるとは言えない。しかし、これも話を単純にするために考慮しない)。

 一方、株式、土地、営業権はどうであろうか。この場合の株式、例えば社長であるあなたが創業間もなく利益を出し、その一部を上場企業の株式に投資したとしよう。その場合、投資された株式の、あなたの会社の決算時における、株式市場における株価が「時価」になる。また、土地も同様である。利益の一部を土地に投資したとした場合、あなたの会社の決算時の、土地の時価が実体の数字になる。さらに、営業権も同様で、営業権の「時価」、営業権の時価とは、これもいくつもの論文が書けてしまうほどに奥の深いものであるが、も、正しく評価に含む必要がある。

 なお、ここで営業権について若干触れておこう。営業権にはいくつも意味があるが、本論においてはいくつかに限定して説明する。第一に、ここで言う営業権とは、正に企業が何らかの「営業をする権利」のことを意味する。例えば、内航海運業を営むにはそのための営業権を入手しなければならない。また、中央卸売市場で仲買人行為を行うには、同様に営業権を入手しなければならない。このような「営業する権利」が、営業権の筆頭である。

 次に、ここまで説明してきた純資産方式による株価を超越したプレミアムのことも営業権と呼ぶ。例えば、上の例で算出されたあなたの会社の株価が時価ベースで一株あたり12万円であったとし、それに対して別の会社が1株あたり15万円で全株買い取ったとする。その場合、買取価格(15万円X20株=300万円)− 時価総額(12万円X20株=240万円) = 60万円が、買い取った会社のバランスシートにおける「営業権」となる。
(次回へ続く)


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ベンチャーキャピタルの投資テクニック 3

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ベンチャーキャピタルの投資テクニック 3

 例を挙げよう。例えば、あなたの経営するベンチャー企業が、創業から一年を迎え、次のようなバランスシートを構成したとする:

資産の部            負債の部
現金 100万円         借入金 150万円
売掛金 50万円
株式 50万円
土地 100万円
営業権 50万円         資本  200万円

資産総額から負債総額を差し引いた金額は200万円であるので、あなたの会社の純資産額は200万円になる。そして、仮にあなたの会社が、創業時資本金100万円、発行済株式数20株であったとした場合、現時点におけるあなたの会社の株価は、純資産方式においては1株あたり10万円ということになる(純資産200万円÷20株=10万円)。そして、仮にこの時点であるVCから出資の打診があったとした場合、投資金額および株式評価額については、この純資産価格をベースに協議が行われることになる。

 なお、純資産方式は、大きく簿価純資産方式と時価純資産方式の二つに大分される。簿価純資産方式とは、文字通り簿価つまりバランスシートに計上された数字そのものにより純資産を量る方式であり、一方、時価純資産方式とは、これも文字通り「時価」により純資産を量る方式である。

 上の例に照らすと、バランスシートに記された数字を直接採用して純資産額を求めたのであるから、これは正に簿価純資産方式である。しかし、最近の会計原則は、簿価方式から時価方式へのパラダイムシフトを旨としてきていることは読者もご存知のところであろう。簿価純資産方式に長らく慣れ親しんできた我が国の多くの企業は、簿価の裏に隠された「含み益」を会計に利用することにより独特の信用創造を行ってきた。これは、最近まで続いてきた不動産の右肩上がり成長と対を成すものであり、不動産の成長神話の崩壊とともに、この、いわゆる「含み益会計」の神通力も、いよいよ効力を失ってきた。

 さて、時価純資産方式における「時価」とは、何の時価のことであろうか。それは、バランスシートに計上された数字が必ずしも絶対的なものではなく、何らかの事由、例えば市場との連動によって相対性をもたらされた結果、時価相当となるものである。あるいは、数字に何らかのプレミアムが付加された結果、時価的な含みを持たされるものである。VCがベンチャー企業を評価するに際しては、純資産方式における、時価純資産方式を特に評価する傾向にある。
(次回へ続く)


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ベンチャーキャピタルの投資テクニック 2

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ベンチャーキャピタルの投資テクニック 2

 話をベンチャーキャピタルの投資手法に戻そう。案件が発掘され、投資会議の関門をクリアしたベンチャー企業は、財務諸表を主とした必要書類の提出を求められる。VCからの資金調達を目論むベンチャー企業のほとんどは、財務諸表に何らかの「お化粧」を施している場合が多いので、「お化粧」を見破り、適正な数字を把握することがVCの担当者つまりキャピタリストに求められる。そして、そのことが有能なキャピタリストとしての必要条件のひとつであることを前述した。

 さて、ベンチャー企業の財務諸表が「適正」であるとみなされると、次に株式の「価値」を検討する段階に移行する。その前に、VCがどのようにベンチャー企業の財務諸表を適正と判断するかに触れておこう。このプロセスにおいて重要なプレーヤーは、言うまでもなく監査法人である。VCは、ベンチャー企業にきちんと監査法人が関与しているかどうかをリクアイアメントのひとつとして重視する。監査法人が関与していないVCとは、そもそも資本政策が組織的に行われていないことの証拠でもあるので、余程突出したケースでない限り、VCの評価においてはマイナスになる。そして、監査法人の関与と、監査法人の行うベンチャー企業の「評価」が、VCにおけるベンチャー企業の財務健全性評価に直結することになる。

 その意味で、あなたがベンチャー企業の経営者であったとした場合、あなたがどこの監査法人とチームを組み、コラボレートしてゆくかが重要なポイントになる。監査法人の重要性は、先のライブドア事件をきっかけにクローズアップされており、「マトモ」で「信頼のおける」監査法人と組むことが必須になる。先のライブドア事件では、監査法人の不適正性が高じて監査法人の顧客離れを誘発し、その結果、監査法人そのものが解散に追い込まれることになった。アメリカでも、エンロン不正経理に関して同社の監査法人が同様に解散に追い込まれており、正しく「監査役」としての機能を果たすことがより強く求められてきている。ベンチャー企業を経営し、IPOを目指そうと言うのであれば、それにふさわしい監査法人と組まなければならない。

 さて、ベンチャー企業の株式の価値、つまり「株価」の評価方法であるが、まず基本になるのが純資産方式と呼ばれる方法である。純資産方式の純資産とは、対象企業のバランスシートにおける純資産を指す。純資産は通常、対象企業が保有する資産(現金、売掛金、有価証券、土地、建物等)から同じく負債(買掛金、未払金、借入金等)を差し引いた残りを指す。平たく言えば、純資産とはバランスシートの資産の部から負債の部を差し引いた残りの資本の部のことである。一般的には、資本金、資本準備金、積立金、剰余準備金といった科目で構成され、後述するが、上場企業を含めたあらゆる企業の株式評価の基本になる。
(次回へ続く)


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特別コラム 福井日銀総裁のスキャンダルについて 後編

★★緊急コラム★★世間を騒がす、福井日銀総裁スキャンダルに物申す!!


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特別コラム 福井日銀総裁のスキャンダルについて 後編

 筆者が、今回の福井スキャンダルに関して憤っているのは、国民全般が自らの経済的過失を反省することもなく、いたずらに福井氏を攻撃の対象とし、ただそれだけをもって自らの慰みとしている点にある。批判を覚悟で言わせていただくと、福井氏の村上ファンドへの出資は、純然たる投資行為であり、それは、ゼロ金利を象徴とする貯蓄の範疇からはまったく関係のないものである。そもそも、金融政策の一主目的は金融市場と資本市場との関係調整にあり、政策的に金利を低く誘導することにより資本市場への資金流入を促すことにあるはずである。そのことすら理解することもなく、「ゼロ金利を布いた福井総裁が『投資』で儲けるとはけしからん」と叫ぶのであれば、正に馬鹿の主張であるとしか言うほかない。

 命題の逆を論じるつもりはないが、妄信者の目を覚ますには、リスクの議論を呈すべきであろう。我が国では「投資」に関する教育や知識の伝達手段が少ないが、リスクと安定性はトレードオフの関係にあることくらいは理解しておく必要があろう。これは、先のワールドカップでサッカーの世界レベルを思い知らされたように、そろそろ我が国全般においても知らされるべき世界的常識である。今回の世論の論調を概観するに、要するに、「我々一般国民もリスクを取らないで濡れ手で粟のリターンを取りたい。そんなことを実際に行った福井総裁、しかも日銀総裁は、まったくけしからん」と言っているのだ。確かに、土地本位主義体制において確実にローリスクでハイリターンが獲得できた誠に幸運な時代があったのは事実だ(その影響はまだ続き、未だに多くの不動産会社がサラリーマンに『ローンを組んで家を買え』と言っている)。しかし、くりかえすが、それは単に「幸運な時代」におけるひとつの特殊現象であったに過ぎない。時代は、世界標準である「収益還元主義」に移っており、土地の値上り益や銀行金利固執する時代は、既に終わったことを認識すべきである。

 要するに、福井総裁は、リスクの高い村上ファンドにいくばくか「投資」しただけであり、そのことと日銀が金融政策としてゼロ金利政策を布いたこととは何ら関係がないということである。それでも、異論があるというのであれば、想像するに、「日銀総裁のような通貨の番人が、ハイイールドを謳う村上ファンドに出資するのは問題だ。一般国民は低金利で総じて苦しんでいるのだから、本人はリターンを追う行為は控えるべきだ」というものであろう。こうなってくると、ほとんど価値観の問題であるが、筆者は、そのような議論は所詮負け犬の議論であり、かつ、長年ぬるま湯につかってきた者の議論であると断言する。

 いずれにせよ、筆者は、福井総裁は最終的に辞任するであろうと考えている。これが日本の世論であり、空気であり、文化の結果であるからだ。その意味で、金融のような自己主体的な活動には日本国民はまったく向いていないのかもしれない。サッカーのワールドカップにおいて、予想通り決定打においてまったく点が取れなかったように。


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特別コラム 福井日銀総裁のスキャンダルについて 前編

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特別コラム 福井日銀総裁のスキャンダルについて 前編

 福井日銀総裁村上ファンドに出資し、利益を得ていたことが攻撃の標的にされている。前のコラムで、村上氏も福井氏も同じ東大卒仲間であり、何らかのかたちでインサイダー的情報を共有していた可能性がある旨を論じた。今回の事件は、東大インサイダー情報共有の成れの果てが、マスコミを巻き込んだ国民的スキャンダルに至ったものである。

 言うまでもないが、村上ファンドのオリジナルな形態は、違法でも非合法でもない、単なるTOBバイアウトを主旨とした投資事業組合である。そして、任意の組合員であるところの福井氏は、任意組合の有限責任組合員として、いくばくかのカネを村上ファンドに投じていたに過ぎない。そして、そのこと自体は、村上ファンドの存在基盤の合法性と同様、違法でも何でもない。

 マスコミの論調を鑑みるに、今回の一件で問題とされているのは、一連のゼロ金利政策の立役者であるところの日銀の、最高責任者たる福井氏が、国民にはゼロ金利で負担を担がせ、その一方、福井氏自身は濡れ手で粟的な村上ファンドという実にいかがわしい筋からの莫大なリターンを手にしていた、というところにあるらしい。

 しかし、それは所詮本末転倒の議論に過ぎない。同志たる我が読者に対しては釈迦に説法であろうが、上の議論の根本的な誤謬は、投資と貯蓄を同一に論じている点にある。確かに、日銀はゼロ金利政策を布くことにより、利息収入の減少を国民全般に負担させた。バブル期に比べ著しく低下した利息収入は、特に高齢者が大半を占める利息収入生活者を直撃した。また、庶民全般においても、銀行から受け取る利息は事実上ゼロになり、それ相応の負担を国民全般に課した。

 しかし、その大局的なメッセージは、「貯蓄から投資へのシフト」であったことは衆目の一致するところであろう。銀行から受け取る利息で生活できる時代というのは、実はそれこそ「異常な時代」であり、インフレの渦巻くある種の超高成長経済下でなければありえないと言うのが実体であろう。

 我が国の経済は、戦後の焼け野原から出発し、紆余曲折を経て一時の栄華を極め、修正としてのバブルを経て今日に至っている。ある種の幸運に恵まれた我が国経済は、超高度成長という名の「特殊事例」を「常識」とし、国家全体がそれに最適化しようといたずらに時間を費やしてきたと言えなくもない。今日のわが国エスタブリッシュメントの多くは、未だに古きよき時代の慣習を引き摺っているが、それを可能ならしめるのは、従来の常識である「貯蓄は美徳」「投資はリスキー」「銀行が最も信頼できる金融機関」といった、言うなれば「サザエさん一家的経済観念」とでも呼ぶべきものであると思われる。
(次回へ続く)